南渡田に新産業拠点を形成へ 川崎市が方針、AI研究機関を集積

 川崎市は22日、臨海部全体の機能転換を先導するエリアとして、南渡田地区(川崎区南渡田町)に新産業創出拠点を形成する方針を明らかにした。IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)を活用した研究開発拠点の集積を図り、並行してアクセス改善のためにJR南武支線を活用した川崎アプローチ線(川崎−浜川崎、3・3キロ)の具体化も目指す。

 同日の市議会総務委員会で報告した「臨海部ビジョン素案」に直近10年以内に取り組む先導プロジェクトとして盛り込んだ。

 医療技術や創薬などライフサイエンス分野の機関が集積した殿町地区(川崎区殿町、約40ヘクタール)に次ぐ、第2の成長戦略拠点に位置づける。

 南渡田地区は、JR南武支線(尻手−浜川崎)の終点の浜川崎駅南側に位置し、JFEスチールが所有する約50ヘクタール。現在は生産施設、倉庫、研究所などが立地している。

 市によると、同社はビジョンの方向性は共有しつつ現状では生産体制は維持する考えだが、低利用の土地も増えている。市は新産業拠点の形成を見据えて同社と本格的に協議していく方針。5年以内に土地利用計画の策定を行い、10年以内の段階的土地利用を目指す。

 政府は6月に策定した成長戦略「未来投資戦略」にIoTや人工知能、ロボットなどの活用を掲げており、市は特区を活用した殿町地区と同様、国の支援も受けながら研究開発機関の集積を進めたい方針。

 川崎アプローチ線は、川崎駅に接続していない南武支線を改良し、川崎駅と臨海部を直結する計画。国の交通政策審議会答申にも明記されているが、採算性などから実現していない。

 臨海部の通勤はバス輸送に依存しておりラッシュ時の混雑が問題となっていることから、市は南渡田の拠点形成なども進めながらJR東日本側と調整を進めていく考えだ。

 臨海部ビジョンは来年3月に正式決定する予定。

© 株式会社神奈川新聞社