子どもの貧困「連鎖」、支援職員の9割認識 神奈川県内調査

 社会問題化する子どもの貧困を巡り、県内で支援に携わる職員の9割以上が「貧困は世代を超えて連鎖する」と認識していることが、県の意識調査で明らかになった。複雑な問題の解決には他機関との連携が必要としつつ、児童相談所と学校などの情報共有が図られていないことも判明。深刻な現状に直面しながらも、総合的な対策が不十分である実態が浮かび上がった。

 県が22日に公表した調査結果によると、子どもの貧困は連鎖することが多いかとの問いに対し、「多い」(58%)と「ある程度多い」(36%)が合わせて94%を占めた。家庭が抱える困難も「親が経済的困窮や複雑な家庭環境で育った」が57%で最も多かった。

 貧困世帯の子どもの気になる点に関しては「住居の環境が適切でない」「十分な教育を受けられていない」「体や髪が清潔に保たれていない」「食事が十分とれていない」が50%を超え、「医療機関の受診を控えている」も32%あった。

 子どもが抱えている困難は「心身の発達に必要な生活習慣や食事の提供がない」が最多の55%で、「学習についていけない」「自己肯定感・自尊感情が低い」「将来の目標が持てない」「心の状態が不安定」が続いた。成育過程の問題点は「学校の授業についていけない」「ひきこもりや不登校など学校になじめない」と学校生活でのつまずきを指摘する回答がそれぞれ60%以上を占めた。

 また、支援する上で困難と感じる点は「複雑な問題が絡み合って1機関では対応できない」が67%で最も多い一方、他機関との連携に関してはスクールソーシャルワーカーは児相と、市町村や県は学校との連携がそれぞれしにくいとの答えが目立った。連携する上での課題は「情報共有」や「ネットワークの未確立」を挙げる回答が多く、「親の理解を得るのが困難」とする答えもあった。

 県によると、全国で7人に1人の子どもが平均的な生活水準の半分以下という厳しい環境に置かれている。県内の実態は現時点で把握できていないものの似たような傾向にあるとみられ、担当者は「調査結果を踏まえ、教育、生活、保護者の就労、経済支援など総合的な対策を早急に進めていく」としている。

 ◆子どもの貧困に関する意識調査 県は6〜7月、県内で子どもの支援や相談に携わるスクールソーシャルワーカーや児童相談所の相談員、市町村の生活福祉担当者、児童養護施設職員、母子生活支援施設職員ら約2千人を対象にアンケートを実施。インターネットを通じて質問に対する回答を選ぶ方法で、303件の回答が寄せられた。子どもの貧困をテーマにした意識調査は初めて。

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