【解説】〈リバースチール再編〉来春、全事業を移管 JFEグループ企業などに

 リバースチール(リバーS)は、もともと旧川崎製鉄の京浜地区における鋼材販売・厚板加工・引抜鋼管および橋梁建設事業拠点との位置づけだったが、JFEスチール(JFES)誕生によって旧NKKの〝お膝元〟でもあるこの地で他のグループ、シンパ流通が存在する中、いかに独自性や存在意義を見出すかがテーマとなった。

 それ以前に、JFES発足当初のリバーSは厳しい不況下で赤字経営を余儀なくされ、累損も抱えていた。

 04年4月に、旧NKK出身の塚越健次氏がリバーSの社長に就任。当時は「交流人事」の先駆けの一例として話題にもなったが、その主眼は、過去の慣習にとらわれない新鮮な眼や感覚で「経営基盤をしっかりと建て直す」ことへの期待であると、当時の関係者から伺った記憶が蘇る。

 アジア新興国経済の台頭に伴う好況到来も追い風となってリバーSは見事に経営再建を果たす。黒字転換、累損一掃そして株主配当を達成した。

 この間に社内における事業の見直し・改善にも着手し、長く不採算だった橋梁構造物製作(営業権は維持)から撤退するとともにその空きスペースを、産機向けを中心とする主軸の鋼材加工・販売事業の拡充・深掘りに活用。老朽化した厚板加工設備を順次、更新・リフレッシュする。併せて機械加工分野にも力を入れ、最新鋭NC大型5面加工機を増設するなど川下展開を図りながら複合一貫加工体制を整備した。

 さらには「事業の選択と集中」を進める一環で圏内に点在していた営業所を集約・閉鎖するとともに静岡に、磯子や相模、鳥浜に次ぐ新「流通センター」を開設。ISO認証も取得するなど〝中身の充実〟も図った。

 鉄鋼事業(鋼材販売/鋼材加工)、鋼管事業(引抜鋼管製造販売)、建設事業(橋梁補修工事など)、企画営業(不動産賃貸活用)の各部門で事業収益体質を確立し、スタンドアローン(独り立ち)したリバーSが、次の成長ステップに向けて新たな進化を模索したとき、リバーSの特長である「多角経営」路線をこのまま継続・強化していくことが個社としての競争力を高め、ひいてはJFESグループの国内(関東地区)事業強化戦略につながるのか。それとも事業ごとにグループを中心とした専門企業に移管・譲渡し、それぞれの移管・譲渡先企業のキャリアやノウハウといった経営資源との相乗効果を発揮していくのかについてJFEグループ内で検討を重ねた結果、今回のスキームに行きついた。

 事業移管を受けるJFEテクノス、サンキン、JFE鋼材では規模拡大と技術融合によるメリット創出が期待でき、特に中核部門を引き継ぐJFE鋼材ではJFESと一体となったコア事業の競争力強化が見込まれる。リバーSの従業員は、事業移管先企業が引き継ぐと思われる。

 リバーSは1948年(昭23)4月に「佐野鋼材(前身)」として創業。いち早く直需志向、加工(モノづくり)に着手し、往時は東日本全域に拠点を持つ一大鋼材センターとして名を馳せた。「水を流す川(リバー)の如く、鉄(スチール)をマーケットに流す流通機能」が社名の由来。(太田 一郎)

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