「子連れで議会へ」議論呼ぶ 仕事と子育て両立できる社会に

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長男同伴で熊本市議会本会議に入り、議会事務局の職員らからの説得を受ける緒方夕佳市議(右)=22日、市議会棟

 生後7カ月の長男を連れ、熊本市議会本会議に出席しようとした市議の緒方夕佳さん(42)の行動が、議論を呼んでいる。「開会を遅らせた」という批判の一方で、仕事と子育ての両立を望む姿に共感の声も。「問題提起をしたかった」という緒方さんは「仕事と子育て、どちらかを犠牲にしなくてもいい仕組みを」と訴える。(高橋俊啓)

 「子育てと議員活動の両立については妊娠中から議会事務局と相談を重ねてきたが、『それは個人的な問題』という対応だった」。市議会定例会開会日の22日。緒方さんは開会予定時刻、午前10時の数分前に長男を抱いて議場に入り、自席についた。「壁のようなものが立ちはだかった状態を進めたかった」と“子連れ出席”を決意したという。

 「例えば国会には、議員も使える託児所がある。利用するのが一人であれば、ベビーシッターの配置でもいい。社会では託児所を持つ職場は増えているのに、政治の世界には女性が少ない」。子育て世代の代弁者として活動するためにも、赤ちゃんがいる身で発言したい…。行動は「ルール違反」と批判されたが、「今の規則では、議場に入らないと意思表示ができない」と説明する。

 議会事務局や議長らから、「赤ちゃんを外に出すように」などと説得されたが、しばらくは動かなかった。「小さな子がいるのにいないかのように、介護をしているのにしていないかのように働くことを期待される。だが、私は赤ちゃんがいる議員。そういう存在だと知っていただきたかった」

 自分だけではなく、子育て世代の問題だという思いがあった。「仕事と子育ての両立は助け合わないとできないのに、一人の双肩、特に女性の肩にかかってくる。友人も上司に泣きながら相談したと言っていた。頑張っている子育て世代が声を発しても発しても、現状は変わらない」

 議長室で話し合い、40分遅れで本会議は開会した。緒方さんは子どもを知人に預けて出席。「議長から『(子育て議員の環境整備を)一緒に話していこう』と言っていただいた。大きな壁に、一歩踏み出せた。やっと議会で議論ができる状況になったのではないかと、希望を持っています」

 緒方さんはNPO法人沖縄平和協力センターや国連職員として働き、4カ国に住むなど、国際経験もある。2015年に初当選。夫と子ども2人の4人家族。同年8月には、市議会視察に当時授乳中だった長女(4)の同伴を許可された。

 「議会は社会の縮図であってほしい」と緒方さん。「赤ちゃんが小さいうちは、抱いて(議会に)出られて、子どもがうろうろしていても、それが当然と受け入れられるような…。それができれば素晴らしいと思う」

●熊日フェイスブックへの意見

 緒方夕佳市議の「子連れ議会出席」を巡っては熊日公式フェイスブックにも多くの意見が寄せられている。(一部抜粋)

 「ここまでのパフォーマンスをしなければ女性が働ける託児環境は整わないという気持ちは分からないでもないが、子どもをだしにするのも議会を紛糾させるのも逆効果」

 「批判を受けるのを覚悟の上で、市民のために『乳児のいる母親が働きづらいっておかしくないですか?』という抗議をしたのではないですか」

 「議題は子育てだけじゃなく、経済・高齢者福祉・災害復旧などたくさんある。一議員として、ちゃんとした話し合いができるように考えてほしい」

 「子どもを持った途端にものすごく働きづらくなる女性の現状を、自分の経験を持って世の中に伝えようとした。大切な一歩だと思う」

 「市議会議員の給与は1千万円近くある。なぜ議会、委員会開催の時ぐらいベビーシッターを雇えなかったのか」

 「市議会が託児所を作らないのに、民間会社は作れと言えるのか」

 「もっとアピールの仕方があったのでは。議員になり、子育てと仕事をやる覚悟だったら、やり方を考えて行動した方が良かった」

 「ニュージーランドでは隣の男性国会議員が女性国会議員の答弁中に子どもを預かっていた。女性が働きながらキャリア形成も子育てもできる環境が、日本でも早く整いますように」

 「前例がないというコメントが多すぎる。熊本市から発信してもいい」

(2017年11月26日付 熊本日日新聞朝刊掲載)