【鉄鋼能力過剰問題の多国間会合】国ごとの生産能力データ、検証の仕組み協議へ 30日にドイツで閣僚会合

 鉄鋼業の能力削減問題を協議する多国間会合「グローバル・フォーラム」(GF)は30日にドイツ・ベルリンで閣僚会合を開く。参加する33の国・地域はすでに過剰能力に関するデータを報告済み。GFでは、こうしたデータの共有方法に加え、報告内容を検証する仕組みづくりが課題となっている。閣僚会合では一連の課題を踏まえ、能力削減の実効性を担保する具体的手法を協議する予定だ。

 日本は経済産業省の柳瀬唯夫経済産業審議官が出席する。GFは閣僚会合での議論を踏まえ、G20(20カ国・地域)に報告するため、中間取りまとめを行う。

 日本鉄鋼連盟の進藤孝生会長(新日鉄住金社長)は27日の定例会見で、「中国の努力もあって能力削減は着実に進んでいる。この流れをマネージメントする仕組みが必要」と述べ、GFの議論の進展への期待を示した。

 GFは昨年末に発足。事務レベル会合は今年に入ってから本格化し、同会合は既に6回行われた。この間、参加国・地域は鉄鋼生産能力に関するデータに加え、市場歪曲的な政府支援の有無などを報告した。

 現在、焦点の一つになっているのが集めたデータの検証方法。データをどう評価するのかに加え、データの更新・検証の頻度をどうするのかも課題。政府支援に関しては「市場歪曲的な支援」の定義が検討課題として残っている。

 GFは、データ検証の仕組みを確立することでデータの精度が高まるとみている。精度の高いデータの共有を通じて、参加国・地域が自主的に能力削減に取り組める土壌をつくりたい考えだ。

 能力削減をめぐっては、最大の過剰国とされる中国での取り組みが大きく進展している。だが、世界的に景気に明るい兆しが広がる中、鋼材需要の回復によって非効率設備が温存されてしまうとの懸念も残る。生産能力に関するデータを収集・検証する仕組みを確立することは、非効率設備の淘汰を促すきっかけとなる可能性もある。

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