【トップインタビュー 東洋鋼鈑・隅田博彦社長】下松、下工程のボトルネック解消、増産体制整備にめど トルコの表面処理合弁、18年度は稼働率8~9割に

――17年4~9月期連結決算は、営業利益が前年同期比418・5%の増益を計上し、中でも主力の鋼板関連事業は30・3%増と大きく伸びた。

 「鋼板関連事業の売上高の過半を占める缶用材料は、飲料缶向けの需要の減少により販売数量が落ち込むものの、国内外で需要が堅調なニッケルめっき鋼板と電気亜鉛めっき鋼板の増加が全体の収益を下支えした。ニッケルめっき鋼板は、14年以降に米国向けの輸出分に対して約45%の税率のアンチダンピング関税が賦課されることになったが、その後も粘り強く交渉を続けてきた成果が実を結んでいる」

――一連の流れは続くのか。

東洋鋼鈑・隅田社長

 「電気亜鉛めっき鋼板はベアリングシール用途を中心に自動車や産業機械部品向け、ニッケルめっき鋼板は車載、民生用とも電池向けの需要が旺盛だ。特に電気自動車(EV)用の二次電池向けでは、米国の新興EV大手が現地で増産を計画するほか、中国も有望な市場の一つに挙がるなど、中長期的に需要は増加傾向で推移するだろう。また民生用も電動工具や電動自転車をはじめ市場のすそ野が幅広く、今後の成長が期待される」

――供給面でどう対応していくのか。

 「生産拠点の下松事業所(山口県下松市)では、今夏にニッケルめっき鋼板の製造ラインを増強したほか、今年度中にスリット能力を高める工事を終える見通しになっており、これまで抱えていた下工程のボトルネックを解消させることで、増産体制の整備に一定のめどがつく。海外市場については当面下松からの輸出で対応する考えだが、今後の受注動向次第では、現地生産についても検討する必要が出てくるかもしれない」

――トルコの現地資本との合弁会社、トスヤル・トーヨー社が建設を進めてきた表面処理鋼板工場(年産能力約80万トン)は、今年5月にホットコイルからの一貫生産を開始して半年が過ぎた。進ちょくはどうか。

 「足元ではトルコ国内向けを中心にカラー鋼板と亜鉛めっき鋼板が全体の生産水準を押し上げており、ブリキも着実に出荷を積み上げている。現地では、生産規模の追求と両にらみで今後の安定供給に向けた品質の向上に取り組んでおり、顧客からのアプルーバル(品質承認)の取得も進んでいくだろう。操業2年目の18年度には当初の計画どおり稼働率を8~9割へと引き上げるとともに、連結ベースでの利益貢献を目指したい」

――17年4~9月期は鋼板関連事業の増益に続き、機能材料関連事業や機械関連事業も前年同期から収益が改善した。

 「機能材料関連事業は、磁気ディスク用アルミ基板と光学用機能フィルムの需要が前年同期に比べ回復しており、当初の予定には届かないものの、通期でも一定の利益を確保できると想定している。機械関連事業では、昨年子会社化した自動車用プレス金型の製造販売を主力事業とする富士テクニカ宮津において、納期の平準化に向けた受注活動やコストダウンに積極的に取り組んでおり、同社の近い将来の黒字化に道筋が付いてくるだろう」

――18年度が最終年度の中期経営計画は、今年9月末で折り返し地点を迎えた。

 「鋼板関連事業はすでに営業利益の進ちょく率が100%を超えており、機能材料関連事業と機械関連事業も残る1年半で目標値に近づけていきたい」(中野 裕介)

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