阪和興業、中国・浙江省に加工拠点 ステンレス流通最大手の大明国際などと合弁

普通鋼含め年110万トン販売

 阪和興業は28日に東京本社で会見を開き、ステンレス流通加工で中国最大手の大明国際グループ(総裁・周克明氏)などと合弁会社を設立し、中国・浙江省に鉄鋼総合加工センターを開業すると発表した。2019年初頭の稼働開始を予定し、普通鋼も含めて年間110万トンの販売を目指す。

 新合弁の資本金は5億人民元(約85億円)で、出資比率は阪和興業15%、大明国際60%、高炉大手の馬鞍山鋼鉄集団25%。運転資金を含めた総投資額は8億人民元(約136億円)に上る。

 新工場は上海の南西部に隣接する浙江省嘉興市に15万平方メートルの用地を取得し、工場2棟(延べ計9万平方メートル)と事務所棟(6千平方メートル)を建設。設備面では欧州や日本製のスリッターやレベラー、研磨機、レーザ・プラズマ・ガス溶断の各切断機やプレス機、曲げ機、自動溶接機、マシニングセンター、NC加工機といった下工程も担える機材も導入する。従業員数は初めの3年間で280人。

 18年末に試運転を予定し、19年初めに本格稼働を開始。3年以内の目標値は、年間販売量がステンレス30万トン、普通鋼80万トンの計110万トン、売上高は50億人民元(約850億円)を掲げる。

 販売先は中国内の企業向けが70%、現地日系企業向けが10%、在中欧州企業向けが20%を見込む。業種は自動車や家電、エンジニアリング・環境など。主に下工程の加工を施した製品の販売を主体とする。

【解説】中国のステンレスサプライチェーン、完成形に近づく

 大明国際グループ(以下大明)は事業規模で他を圧倒するステンレス流通加工企業。2016年の販売実績はステンレス161万トン、普通鋼115万トンで加工量はステンレス232万トン、普通鋼106万トン。中国は世界のステンレス生産量の5割強を占め、大明グループはその中国で約1割のシェアを握る。

 普通鋼にしても13年に進出して以来、厚中板分野でホットコイルを拡販し、わずか4年目で100万トンの大台に乗せている。

 大明は中国にコイル・鋼板加工9拠点、部材加工2拠点などを持ち、従業員数は4300人以上。1988年の設立以来、コイル・鋼板加工拠点の拡充に伴い、グループ内で切断加工と部材加工の融合による高付加価値化を追求してきた。

 10拠点目となる新合弁は、素材から製品までのワンストップ・ソリューション機能を世界最先端の領域まで高めた鉄鋼総合加工センターになる。

 阪和興業にとって大明と組む意義は大きく三つある。まず華東地区の既存2コイルセンターが需要増を背景に2年以内に加工能力不足に陥る見通しで、新たな拠点開設を必要としていた。

 二つ目は中国政府が中国製造2025施策を推進する中で、中国製造業で自社の強みに経営資源を投入し、弱みは外注化を図る流れがあること。顧客のアウトソーシングに呼応するには「従来型のコイルセンターの概念では対応できない」(海老原弘・阪和興業専務)として、日本で展開する「そ・こ・か戦略(即納・小口・加工)」の中国版ともいえる大明の事業戦略に強く共鳴した。

 三つ目が長年かけて発展させてきた中国におけるステンレスビジネスを完成形に近づけられることだ。ニッケル、クロム原料販売、青山鋼鉄とのインドネシア合弁、宝武鋼鉄とのステンレス冷延合弁に大明との合弁が加わり、原料~材料~製品のサプライチェーンが完成する。

 大明が阪和に期待するのは阪和の調達力、特に日系ユーザーなどハイエンド分野の販売力に加えて、工場管理ノウハウもある点だ。新合弁は大明グループの既存工場に比べて労働生産性の40%向上を目指す。自動化設備や効率的なレイアウトもあるが、阪和の工場管理ノウハウへの期待も大きい。(谷山 恵三)

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