【東海地区鋼材流通の課題】人手不足・残業規制が業務圧迫 IT化などで効率化模索

 東海地区の鋼材流通・加工業でも、需要回復は徐々に実感できつつある状態だが、人手不足や残業規制で日常業務を十分にこなせなくなっている状況も目立ってきた。各社では効率的な業務運営のほか、ミルシート管理や受発注業務、営業補助業務などを「ITを使ってシステム化できないか」と模索する動きが出てきた。これまであまり話題に上らなかった諸資材、諸コストの上昇がクローズアップされる中で、流通筋の市場への転嫁とともに、業務効率を上げて増える業務量にいかに対応するかが課題となっている。(片岡 徹)

 「これ以上業務が増えてくれば、注文・納品などの日常業務をこなすことは難しくなる。なんとか対策を考えなければ」と名古屋市内の大手特約店社長。

 地区特約店では、受注ロットの小口化、当用買い傾向が進み、配送や業務の量が増える一方で収益がそれほど伸びない。市中相場の変動を意識した仮需も少なく、ミルシート管理や納期対応、在庫管理などの業務負担も増している。

 そうした中での人手不足と残業規制。結局、休日を増やさなければ人材を確保することは難しくなっている。

 地区のある特約店では、人材を募集しても人が集まらず、かえって人材流失も目立ってきたために「年間休日を10日程度増やした」という。配送業務でも運転手の確保が難しくなっており、コスト増要因。

 こうした慢性的な条件下で、仕事が増えてくる。うれしい悲鳴ではあるが、それらの業務をこなすことがだんだん難しくなる。

 地区の厚板溶断業や薄板加工業、形鋼などの切断などの加工業務にも、繁忙感が目立ってきた。建築関連などには一部に出遅れ感があるが、建産機や工作機械、自動車などはいずれも堅調。年度内はこうした現状の底堅さが続きそうだ。また、年末から年度末にかけては建設関連も動きだしそう。

 まずは現状の人員、設備能力で業務をこなそうとするが、残業時間との兼ね合いで限界が生じる。「仲間に業務を依頼して業界内で助け合いも行うが、ただでさえ少ない収益を減らすことにもつながる」(加工業)などの経営判断も出てくる。

 過度な残業が従業員の日常生活に負担をかけ、健康問題などに発展するケースは、避けなければならない。企業は人で成り立っており、人々が会社での活動を通して生活を豊かにする、という基本的な考えに反することにもなりかねないためだ。

 そこで、受発注業務やミルシート管理、営業補助業務などにコンピュータを活用できないか、との模索が始まる。すでに一部の扱い筋ではこれらの業務をIT化しているが、例えば特約店段階のミルシート管理などはペーパーチェックが基本でシステム化しにくい。

 また、パソコンやスマートフォンを使った受注業務なども、現段階では地区業界全般にはなじんではいない。請求書などの発行業務も自動印刷などはするが、オンライン化とまではなかなかいかない。

 ヒモ付き比率が高まっている同地区。これまで議論を先送り気味にしてきた「諸種のコストアップ要因をユーザーとの価格交渉に加える」取り組みに加え、事務処理の効率化、ホワイトの生産性向上という部分が、市場全体にとっての課題といえる。

© 株式会社鉄鋼新聞社