日鉄住金テックスエンジは、製鉄所の設備工事・整備を担う中核子会社だ。機械、電気、建設など幅広い技術を持つ設備整備のプロ集団で、大型の設備工事にもワンストップで対応する。設計、施工からその後のメンテナンスまで一貫で請け負うこともできるなど総合的なエンジニアリング力が強みだ。北は北海道、南は大分県まで新日鉄住金の製鉄所に対応する形で全国10カ所に拠点を構え、新日鉄住金の競争力を支えている。
テックスエンジは、いずれも旧新日本製鉄系の太平工業と日鉄エレックスが経営統合し2013年10月に発足した。さらに翌14年10月には旧住友金属工業系の日鉄住金プラントを含む新日鉄住金グループの同業7社と合併。2度の統合で人材と技術の幅を広げ、鉄鋼業向けの設備工事会社では国内で群を抜く規模を誇る。
大型工事にワンストップで対応できる幅広い技術力は強みの一つだ。一般的に製鉄所の設備工事は機械、電気・計装、建設などに分けて発注され、各工事を異なる企業が請け負うケースが多い。これに対しテックスエンジは「機・電・建」をはじめとするさまざまな工事に一括で対応し、無駄が少なく効率的な設計・施工が可能だ。結果として工期やコストを抑えられるうえ、作業の安全や工事品質も確保しやすくなり、製鉄所の競争力強化につながっている。
いざという時に作業員を集める動員力にも強みがある。例えば新日鉄住金・鹿島製鉄所(茨城県鹿嶋市)の熱延ミルで大規模な定期修理を行う場合、鹿島支店に加え君津製鉄所(千葉県君津市)内の君津支店も応援に駆けつける。升光法行社長は「単に規模が大きいだけでなく、北から南まで機動的に人を動かせる。人手不足という労働環境下でこの動員力は変え難い価値がある」と胸を張る。
君津・鹿島のような連携は、名古屋・広畑・関西、大分・八幡・光の各支店間でも進んでいるという。定常的な工事に加え、設備トラブルなどに伴う突発的な工事要請にも全国の支店連携で応援体制を敷き、早期復旧に貢献する。
今後はこうした総合的なエンジニアリング力をもう一段引き上げることが課題だ。具体策の一つが「得意分野の異なる企業と連携し、さらに一貫対応力を強化する」(升光社長)こと。テックスエンジが手掛ける設備工事は製鋼工程以降が多い。例えば製銑分野を得意とする企業と協業すれば、製銑・製鋼の工程をまたぐ技術領域の広い大型工事をより効率的に仕上げられる。
機械、電気・計装、建設分野の得意技術を生かし、新日鉄住金グループ外部の企業が手掛けてきた重機や制御盤などを内製化する「メーカー代替」の取り組みにも力を入れる。従来品と同等の品質を割安に仕上げ、製鉄所のコスト競争力に貢献する。
海外もテーマだ。タイに続き、昨年にはインドネシアに現地法人を設立した。新日鉄住金、大阪製鉄、ラティヌサ、ブルースコープ各社の同国拠点の設備保全に対応する。
国内製鉄所では老朽化設備の更新など基盤整備の取り組みが続く。新日鉄住金グループの総合エンジ会社としての役割はさらに高まりそうだ。
(このシリーズは毎週水曜日に掲載します)
企業概要
▽本社=東京都千代田区
▽資本金=54億7千万円(新日鉄住金の出資比率100%)
▽社長=升光法行
▽売上高=2987億円(17年3月期連結)
▽主力事業=製鉄所の設備工事・整備・メンテナンスなど
▽従業員=1万1284人(連結、17年3月末)