アルコール依存症 まず減酒を目標に 震災後の相談急増

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アルコール依存症でお酒がやめられない人に対して、「継続的な支援が必要」と語る三重県立こころの医療センターの長徹二診療部次長=熊本市中央区

 熊本地震以降、熊本県内でアルコール依存症の相談が急増している。熊本市は20日、「大災害後の被災地では飲酒量の増加などの問題が顕在化する」として、依存症研修会を開催。講師を務めた精神科医で三重県立こころの医療センターの長徹二診療部次長(41)が「お酒をやめられない人への継続的な支援が必要だ」と呼び掛けた。

 県精神保健福祉センター(熊本市東区)に今年4~9月に寄せられたアルコール依存症の電話相談は102件。震災前の3倍を超えるペースで、昨年以降、増加が目立っているという。

 東日本大震災後、宮城県石巻市でアルコール依存症の医療支援に携わる長さんは「もともとお酒に問題を抱えていた人にとって、災害は必ずと言っていいほど悪化の引き金になる」と指摘。避難や慣れない暮らしで地域とのつながりが消え、「仕事もなく朝起きる必要もないから、ついつい飲んでしまう。生活の中心がお酒に変わってしまう」という。

 アルコール依存は、「程度の問題」と長さん。「よく飲む」「はまって飲む」ことはあっても、「飲むと問題が生じる」「問題が増える」ようになると要注意。「コントロールがきかなくなることが依存症」と説明する。

 こうした飲酒のブレーキがきかない人に対する治療は変わりつつある。回復方法はこれまで、(1)断酒のやる気を継続する通院(2)飲みたい時に飲酒を抑止する抗酒剤の服用(3)断酒会など仲間と酒を断つ自助グループへの参加-の3本柱の厳守が絶対、とされてきた。

 ただ、長さんが独自に依存症患者を調査したところ、「2年間完全に断酒できた人は、わずか数%の超優等生だけ。『いきなり酒を手放せない』というのが依存症の人の本音だ」と代弁する。

 こうした中、厚生労働省の研究班が今春、アルコール依存症の治療ガイドラインを、「治療から脱落する事態は避け、使用量低減も目標」と改定した。長さんも「現場の実態にあった画期的な変化」と評価する。

 では、実際にアルコール依存症と接する際に気配りすべき点は何だろうか。長さんはそのポイントとして、(1)まちがいを反射的に指摘しない(2)いいところを見つけて認める(3)抵抗感に逆らわない-の3点を上げる。

 具体的には、(1)「酒は百薬の長って言うよね」と言う相手に対して「飲みすぎは体の害だ」と頭ごなしに否定せずに「健康に配慮しているんですね」などと応じる(2)笑ったり生き生きしたりしている瞬間を観察して相手を認め、自信をつけさせる(3)断酒への抵抗感は「自分でも気にしている裏返し」と捉えて共感してあげる-といった具合だ。

 アルコール依存症を「対処できない生きづらさを、お酒を飲むことで表現している」という長さん。飲酒をやめたい思ってから受診までに4、5年かかる人が多いという現状を踏まえ、「本人の内面的な問題に気付いて信頼関係を作り、治療を継続する態勢づくりが重要だ」とした。

 研修会は熊本市こころの健康センターが企画。医療関係者ら90人が聞いた。(松本敦)

(2017年11月29日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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