【トップインタビュー メタルアート・多田修社長】需要好調、今期売上げ最高へ インドネシア子会社、黒字軌道に

――今年度4~9月期は自動車、建機、農機といずれの分野も好調で、売上高は前年同期比で2割増となったが。

 「建機向け鍛造部品の売上高が、4割強増えたことが大きい。建機の生産は、当初夏場までは好調だが、下期には大きく減少すると見ていたが、下期もそれほどは減っていない。中国の需要が回復し、アセアンでの鉱山マーケットが活況を取り戻し鉱山用機械が好調。欧米も堅調だ。また当社主力の自動車は予想通り高水準が続いている。ダイハツのコンパクトカーの売れ行きが良く、エンジンやCVT用部品の出荷が増えている。

――収益も黒字に転換した。

メタルアート・多田社長

 「売り上げ増に加え、前期にあったインドネシア子会社の為替評価損がなくなったことが大きい」

――来年あるいは来年度の先行きをどう見ていますか。

 「建機については、来年度増産の計画を建機メーカーは立てている。自動車についても足元の高水準の状況が続くだろう。18年3月期の売上高は300億円と過去最高を予想しているが、さらに上振れする可能性もある」

――あえて懸念材料があるとすれば。

 「今期の受注はほぼ固まっており、販売面での心配はない。一方、鋼材の供給面は納期遅れが起きており、先行きも心配だ。材料がひっ迫すると当社の生産・出荷にも影響が出てくる。こういった供給タイトな状況が続くのであれば、供給ソースの多様化を検討していかざるを得ない」

――2015年から稼働したインドネシア子会社は苦戦が続いていたが。

 「インドネシア子会社は、連結売上高の約10%、30億円を占めているが、今期(17年1~12月)も売上高は計画未達に終わりそうだ。主にダイハツの小型車用の部品を供給しているが、ローン規制の強化で販売が伸び悩んでいる。ただ収益に関しては、予定通り黒字を確保できそうだ。インドネシアの自動車需要は現在、踊り場状態だが、今後回復が見込まれる。またダイハツ・トヨタだけでなく、ホンダや日産などにも部品の供給を始めているので、来年以降は確実に伸びるだろう」

――インドネシア以外の海外展開については。

 「軌道に乗ってきたインドネシアを中心拠点に据え拡充していきたい。トヨタとダイハツは、今年、新興国小型車カンパニーを発足し、小型車の企画・開発に力を入れている。当社も他の鍛造メーカーとの住み分けを図りながら、インドネシアから東南アジアへの部品供給を強化していきたい。20年度以降は、現在3ラインある生産ラインを、さらに3ライン増設することを検討していきたい」

――来年4月1日に機械加工の子会社、メタルテックスを吸収合併するが。

 「メタルテックスは当初、鍛造後の荒加工をしていたが、08年にCVTの機械加工を開始して以来、加工の付加価値は向上。品質上の統一性を持たせるため、メタルテックスを吸収合併し鍛造から機械加工まで当社で一貫して行う体制にする」

――100周年のインタビュー(16年4月)の際、売上高300億円、営業利益30億円を目標とした。売上高は今期超過達成できそうな勢いだが、営業利益は13億円と予想している。

 「営業利益が目標を達成できそうにないのは、他社との競争で想定した価格での販売が困難だったことやインドネシアの子会社の立ち上げが思うようにいかなかったことが主因だ。インドネシアは軌道に乗ってきたので、国内でのコスト競争力を強化するため、17~19年度の3年間は各年度約25億円の設備投資を進めていく。まず来年度は2500トンプレスを増設する。新ラインは、鍛造の途中工程の変形量を見直すことで本体プレスを小型化した。また、ロボットによる搬送にすることで工程の自由度を向上させ、製品の寸法精度が良く、不良品の少ない高品質ラインを実現する。生産コストは従来より3割下げられる。今後も設置後40年を超える設備については順次更新し、生産の効率化を図っていく。当面は売上高営業利益率8%を収益の目標としていきたい」

――長期的な視点での課題は。

 「自動車の電動化への対応だ。中国や欧州ではEV(電気自動車)へのシフトが一気に進むとされているが、10年程度先では、それほどEV化は進展しないと見ている。その間に技術開発を進め、EVへの部品供給体制を整えたい。既にEVのモータ部品を鍛造品で試作し終えた。また軽量化に対応し、アルミやチタンなどへの材料置換を検討している」(橋川 渉)

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