東京製綱、炭素繊維複合材ケーブルと防災製品で海外成長戦略を加速

 東京製綱は、海外市場で成長戦略を加速させる。大規模な潜在需要が見込まれる炭素繊維複合材ケーブル(CFCC)と防災製品の事業を分社。各国で政治や経済の情勢に合わせた迅速な営業活動に対応するほか、両事業への投資を重点的に進める。来春にも両事業を継承して始動する新会社を軸に関連需要を捕捉し、新たな収益基盤の確立を目指す。

 CFCCと海外防災製品事業をめぐっては、きょう1日付で東綱の完全出資で設立する東京製綱インターナショナルを承継会社、東綱を分割会社に来年4月吸収分割する。新会社は現行の中期経営計画で最終年度の20年3月期、売上高130億円(CFCC85億円・防災製品45億円)以上、営業利益25億円以上の事業規模を想定。海外比率は連結売上高で26%以上を目標に据えるのに対し、新会社で過半を超える16%以上を狙う。営業利益は全体の3割を上回る水準を視野に入れる。

 東綱はCFCCについて、送電線分野で今後3年の高温低弛度電線向け需要がインドネシアで250億円以上と試算。北米では同期間のCFCC需要が100億円以上とし、有力ユーザーが同電線を来年2月から販売する。インドやブラジル、マレーシアでは現地のパートナーが試作を進めており、来期以降の予算化で受注が開始するとみられる。土木用途はフロリダ、ヴァージニア両州の海岸地帯でコンクリート杭に採用されるほか、同州の新規プロジェクトで4億円規模の受注獲得に動く。岩手県北上市に来年7月の稼働予定で建設する新工場と既存の蒲郡工場の年産能力が計6千キロメートルに対し、旺盛な需要を背景に出荷時期の動き次第では「生産能力の限界に近い操業状況も見込まれる」(同社幹部)。

 防災製品の市場規模は、メッカの巡礼道路で大規模な整備が控えるサウジアラビアで数百億円、現地資本と合弁で建設する新工場が来年5月に操業予定のロシアで50億円、アルマティ市内で工場を拡張移転したカザフスタンで20億円に上る。

 30日に都内で開催した決算説明会で中村社長は「CFCCと防災製品は中計達成の要(かなめ)」と強調。現中計の3年間で総額131億円の設備投資を見込み、うち70億円を成長戦略の対象分野に充てる。東綱では「極めて大規模な潜在需要」(中村社長)を持つ両製品を中心にグローバル市場の競争力強化を急ぐ。

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