【新社長】〈糸久商工・糸久泰輔氏〉直販・小口取引で差別化 20年に売上高50億円、営業利益1億5000万円へ

 軽量下地材メーカー、糸久商工(本社・東京都足立区)の社長に就任した糸久泰輔氏。「今夏の兼政鉄鋼との事業統合を契機に、生産体制やデリバリー、品質面も含めて、取引先各社に継続かつ安定的に製品を供給するメーカーへと成長していきたい」と抱負を語る。

 同社は1952(昭27)年に泰輔氏の祖父・糸久亨氏が足立区に興した糸久金属工業所が前身。現在は埼玉八潮工場(第1~3工場)と兼政都留工場、営業拠点は西東京営業所、兼政営業所のほか、物流拠点は東久留米倉庫と川崎センターを構える。生産量は月1100トン。

糸久商工・糸久社長

 同社の特長を「需要先への直販営業と、肌理の細かな小口取引の対応力」と挙げる。「取引先は450社を超えており、親方と2~3人の会社もある。利幅は大きいが、営業一人ひとりが抱える取引先も多いため、デリバリーなど常に連絡を受ける事務方のレベルアップが欠かせない」としている。

 また10数年ほど前から石膏ボードやグラスウールなどの内装建材の扱いを始めたことも、他の下地材メーカーと異なる。「内装工事現場では下地材は1アイテム。他の内装建材も扱えば、取引先にとっても1回の卸しで済むなど効率的な側面もある。下地材と内装部材の扱いは現在約5割ずつ。2つの事業を相乗的に高めていきたい」としている。

 7月には関連会社だった同業の兼政鉄鋼を事業統合した。「工場間や営業間では少しずつ連携を進めている。業績も予算に比べて2割ほど上振れできている。今期(18年6月期)は売上高43億円、営業利益1億円を見込んでいる」。

 足元では原材料である亜鉛めっき鋼板のタイト化、価格上昇の難局を迎えているが、建設市場はこれから首都圏では東京五輪関連や再開発案件などが佳境を迎える。「中長期的には、20年までに売上高50億円、営業利益1億5千万円に引き上げたい」。(伊藤 健)

略歴 糸久 泰輔氏(いとひさ・たいすけ)2002年に独協大学卒業後、米(アイオワ州)に留学し会計学を学ぶ。卒業後27歳で帰国して鉄鋼商社で修行、14年に糸久商工へ入社。趣味は中・高・大学と続けてきたゴルフ。信条は取引先の恩人の言葉「正直に一生懸命やっていれば、必ず見てくれている人がいる。苦しい時でもその方が引っ張り上げてくれる。自分に嘘をつかない志を」。1979(昭54)年12月14日生まれ、埼玉県出身。

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