【MLB】大谷を口説き落とすのは? 米メディア、面談7球団のセールスポイントを分析

去就が注目される日本ハム・大谷翔平【写真:田口有史】

すでにジャイアンツが面談を終えたとの報道も、それぞれの良さは…

 日本ハムからポスティングシステム(入札制度)を利用してメジャー移籍を目指す大谷翔平投手は、4日(日本時間5日)に滞在先のロサンゼルスでメジャー球団との面談をスタートさせ、第1号としてジャイアンツが招かれたと米メディアが報じている。本命視されていたヤンキースなどが落選となる中、大谷サイドから面談に招待されたと報じられているメジャー7球団はいかにして「イエス」を引き出すのか。米メディアが各球団の直接交渉での戦略を占っている。

 アメリカで加熱の一途をたどる“大谷狂騒曲“。現地時間22日(同23日)までの交渉期間で米メディアによる連日の大報道も予想される中、「ショウヘイ・オオタニの争奪戦でファイナリスト7球団を徹底分析」と特集したのはESPNだった。

 アルファベット順で真っ先に登場したのはシカゴ・カブスだ。

 MLBの新労使協定の規約では、アメリカ国外の25歳未満の選手はアマチュア扱いとなるために、23歳の大谷が手に出来るのは各球団に毎年割り当てられるインターナショナル・ボーナス・プールと呼ばれる契約金総額の限度内となる。

 カブスが大谷に提示できる契約金は30万ドル(約3375万円)に留まるが、特集では「彼らはオオタニに一流の勝者のフランチャイズをオファーできる。若き才能に溢れた全ての野手とともに戦う、エースの先発投手だけが足りない球団だ」と指摘している。

 クリス・ブライアント内野手ら若手スーパースターを擁する2016年のワールドシリーズ王者だが、唯一の補強ポイントはジェイク・アリエッタ投手がFAとなった先発ローテーションのエース格。そして、大谷は米上陸直後からWS制覇を狙える環境でのプレーが可能になるという。

エンゼルス加入ならトラウトと“最強コンビ“誕生

 2015年にアスレチックスからフリーエージェントになったジョン・レスター投手を口説き落としたセオ・エプスタイン球団副社長とジェド・ホイヤーGMの交渉力も大きな武器になると、記事では指摘している。そして、アイデアマンとして有名な名将ジョー・マドン監督については「選手の配置転換にここまで前向きな監督はいない」と評価。起用法については「オオタニは右投手相手にライトでプレーし、ジェイソン・ヘイワードをセンターにシフトする可能性がある」と指摘。ゴールドグラブ賞5回の名手、ヘイワードをわざわざセンターに転向させるプランを予想している。

 続いて登場したのはエンゼルス。「マイク・トラウトとプレーしてくれ!」と若き天才打者トラウトとの夢の共演を記事ではいきなり切望している。そして、「西海岸」「ロサンゼルス」という地理的な優位性に加え、「指名打者制度」の存在があり、同じく最後の7球団に残ったドジャースよりも「二刀流が容易になる」と指摘している。

 今季DHで起用されたアルバート・プホルス内野手は本来は一塁の名手。現在ダイエット中で、一塁で出場機会を手に出来るように努力中だという。コール・カルホーン外野手をトレードで放出し、大谷が登板しない日には外野でプレーできるように外野枠を空けるというプランも浮上している。

 一方で、ドジャースは日本人選手との「歴史」という強みがある、記事では言及している。さらに、アメリカ本土では最大の日本人コミュニティを誇り、気候は抜群で、ドジャースタジアムは投手優位なスタジアムとして有名だと分析。ロサンゼルスという大都市のマーケットというメリットも紹介している。

「西海岸」という大谷争奪戦で重要なキーワードも満たすのはドジャースだけではないが、マリナーズ、ジャイアンツ、エンゼルス、パドレスという4球団はいずれも今季勝ち越せなかった。記事では「彼はドジャースと契約しても、救世主にならなくてもいい。彼はクレイトン・カーショーに続く、先発2番手になる」とメジャー最高のエースの存在がプレッシャーを軽減すると分析している。

 4番手にはパドレスが登場。大谷会談の招待状を受け取れなかったヤンキースのブライアン・キャッシュマンGMが漏らした「西海岸」「小さなマーケットの都市」というキーワードを満たす球団だ。

パドレスに加えて、マリナーズも最有力候補?

 記事では「サンディエゴはリストの最上位に躍進したかもしれない。天気は最高で、球場も最高級。パフォレスは大谷を外野で起用しても失うものは何もない。マヌエル・マーゴットを除いて、外野は固まったとは言い難い」と、パドレスの争奪戦における優位性を指摘。今季打率.263、13本塁打、39打点だったマーゴット以外のレギュラーは流動的な状況だとしている。

 そして、すでに面談を終えたと報じられているジャイアンツもまた「西海岸」「美しいスタジアム」という条件に加えて、大谷の夢である二刀流実現にプラスの要素を手にしているという。「2017年でメジャー最悪の外野手の成績」という現状から、「彼らはナショナル・リーグで彼をレギュラーで起用できる稀有な球団だ」と分析している。

 宿敵ドジャースに対する優位性としては、ドジャースがすでに前田健太投手という日本人スターを獲得していることだと指摘。追記事項として「彼はマディソン・バムガーナーとの打撃練習でホームラン合戦を楽しむことができる」とも言及。メジャー最強の打撃を誇る“二刀流”、鉄腕バムガーナーとの打撃練習は最高の見ものになるかもしれない。

 また、マリナーズはジェリー・ディポトGMが大谷へのプレゼンテーションに1年費やしたと明かすほど、獲得に最も近い球団の1つとして知られていた。GMは今季リーグ最多の119打点を記録した主砲ネルソン・クルーズを指名打者から外野にシフトさせるプランをすでに発表するなど、大谷の二刀流実現に全面バックアップの姿勢を示している。1998年の佐々木主浩投手以来、日本人選手が毎年活躍しているマリナーズについて、「メディアがさほどうるさくない」と環境面の良さについても紹介している。

 一方、テキサスを本拠地とするレンジャーズは西海岸ではないが、「いくつかのポジティブな要素も有している」と記事では分析。ダルビッシュ有投手が活躍したフランチャイズで、争奪戦で生き残っている7チームで最大のインターナショナル・ボーナスプール353万5000ドル(約4億円)を大谷獲得のために準備していた。

 花巻東高から直接メジャー挑戦の可能性もあった大谷だが、その当時は「レンジャーズ、ドジャース、ジャイアンツ」が最も獲得に熱心だったと語っていた経緯を紹介。レンジャーズから見れば、先発投手陣の強化が叶い、DHでの打席を準備できるロースターの柔軟性も存在するという。

 どのチームも喉から手が出るほど欲しい唯一無二の才能となった大谷。最後に笑うのはどのチームだろうか。

(上岡真里江 / Marie Kamioka)

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