【工場ルポ】〈アルミ圧延品の製造拠点、日本軽金属・名古屋工場〉板材一貫生産の都市型工場 生産能力向上へ取組み加速

 日本軽金属・名古屋工場(愛知県稲沢市)は、溶解・鋳造からの一貫体制を構築する日軽金グループ国内唯一の圧延拠点。限られた生産スペース、周辺に住宅地が密接する環境下、〝コンパクトな都市型工場〟としてさまざまな工夫を凝らしながら、ここのところ高い需要水準が続く板生産を一手に引き受けている。同所を訪れる機会を得たため、ルポする。(佐野 雄紀)

 名古屋工場は1940年、当時の特殊軽合金稲沢工場として生産を始め、操業77年を迎える。敷地面積は8万1千平方メートル、工場の建屋面積は4万7800平方メートルと一貫工場としては比較的規模が小さい。周りに宅地が密集していることから騒音、水質などの環境対策にも力を注ぐ。

 生産品の比率は板が3割、コイルが4割、箔地が3割だが、近時の需要拡大で厚板の生産数量が増加。10月は1200~1300トンと月産の最高水準に達しており、全体の今年度生産も9万トン超まで伸長する見通しだ。

 スペースの都合上大幅な能力拡大が難しいため、同社グループの板事業は缶材や自動車、汎用フィンといった巨大市場を除く中規模市場向けへの販売数量増を重点テーマに据える。短納期での試作、合金開発力、小ロット対応力などの機能に磨きをかけ、環境への適応を図りながら業容拡大を狙っている。

 使用するスラブは同工場で全体の4割を製造、溶解鋳造設備2ラインで最大7トンの鋳塊を作る。残りの4割が蒲原製造所から、2割を外部から調達する。スラブ長さを識別するため、それぞれに「イロハニホヘト」を表記している。

 続いて面削機でスラブ両面を5~10ミリ程度削り、均熱工程へ。大型炉(8基)で1チャージ当たり10~16個のスラブを、小型炉(1基)では同2~4個をガスバーナー方式で加熱する。

 均熱処理したスラブは4段可逆式・シングルスタンドの熱間圧延機に送られる。1分当たり最大120メートルの速さで15~30回程度圧延し最大幅2300ミリサイズとした後、板厚10ミリ以上のものは厚板として焼入や引張矯正を施す。

 10ミリ以下の板厚は巻き上げてコイルとし、冷間圧延へ進む。3台の設備で板厚6~9ミリから0・1ミリ程度、最大幅1800ミリまで圧延する。

 コイルの焼鈍をするのが連続焼鈍ライン「CAL」。電磁誘導方式を採用することにより、1秒当たり400℃でスピーディーな加熱が可能だ。水による急速冷却も行えることから自動車パネル材の熱処理を手掛けた実績もあり、スペースに限りがある同工場でその特長を発揮する独自設備と言える。

 熱処理後はレベラー加工、スリット加工されたコイル製品に、連続的に切断するフライングシャーで薄板製品へとそれぞれ仕上げ、寸法精度や平坦度、表面疵などの検査後に出荷される。

 生産能力の上方弾力性を確保し難い同工場だが、高い需要水準が続く中で能力アップを目指している。来年度にかけて既存設備の改造を進めるほか、新規設備の導入も検討。来年度の生産数量を9万5千トンまで引き上げる計画。

 また、従業員は定年退職者が集中した時期を経て20歳台が4割、平均年齢35歳と若手が大半を占める。早期の戦力化に向けて階層別の教育プログラムを展開し、人財育成による生産実力の向上にも取り組んでいる。

 アルミ圧延業界では品質データの書き換え問題が一部で深刻化している。名古屋工場ではデータ記入の自動化がすでに実施されているほか、〝トクサイ(特別採用)〟は官能検査のみで、数値で管理する項目には使わない(坂田清司執行役員)方針。それでも「複数人によるチェック体制はまだ不十分だと感じている」(同)とし品質管理体制のさらなる強化を目指している。

 ハード、ソフト両面のレベルアップを通じて、日軽金・名古屋工場は今後徐々に生産能力を高めながら、需要に応じた安定供給体制に磨きをかけたい考えだ。

© 株式会社鉄鋼新聞社