25年ぶりの決断!北朝鮮代表はなぜ外国人監督を招聘したのか?

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 12月8日から(男子は9日から)日本で開催されるE-1選手権。日本、韓国、中国、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)が東アジアのトップの座をかけて争うこの大会で、ハリル・ジャパンが初戦で当たる北朝鮮代表には、特筆すべきトピックがある。同国として25年ぶりに外国人監督を招聘したことだ。
 
 昨年5月から代表を率いているのは、元ノルウェー代表のヨルン・アンデルセン監督。現役時代には、ブンデスリーガのフランクフルトで外国人選手として初の得点王にも輝き、2015年末まではオーストリア2部のSVオーストリア・ザルツブルクを指揮していた人物だが、なぜ北朝鮮はアンデルセン監督を選んだのか。アンデルセン監督の指揮を間近で見ている在日本朝鮮蹴球協会理事長で同国サッカー協会副書記長の李康弘氏は語る。
 
「もちろん、候補はほかにもいましたよ。例えばフィリップ・トルシエ監督やフース・ヒディンク監督なども、正式な契約には至りませんでしたが、数年やってみようかとの返答はもらっていました。それでもアンデルセン監督を選んだのは、現役時代にドイツでプレーしていたから。規律を重んじる文化が代表チームにフィットすると考えたのです」
 
 トルシエ監督と言えば、2002年の日韓ワールドカップで日本を史上初めて決勝トーナメントに導いた人物であり、同大会で韓国を率いて4強進出を果たしたのがヒディンク監督だ。そんな指揮官が候補に挙がっていたことには驚かされたが、そのなかで招聘されたのは、アンデルセン監督に対する期待の大きさを示しているとも言えるだろう。
 
 それはアンデルセン監督の待遇からも伝わってくる。通訳と送迎車はもちろん、平壌の中心部にある高級ホテル「高麗ホテル」の一室が用意されており、アンデルセン監督は妻と飼い犬とともに協会のサポートを受けながら生活しているそうだ。年俸は公表されていないが、李康弘理事長によると「常識的な金額」だという。前出のトルシエやヒディンクのように年俸100万ドル(約1億1200万円)以上というような大金は到底用意できないが、双方が納得できる金額で契約したらしい。
 
 では、アンデルセン監督は、北朝鮮でどんなサッカーを展開しているのか。李氏は続ける。
「現役時代にFWだったことも影響しているのか、アンデルセン監督の戦術は攻撃的であると言えるでしょう。それと同時に、全体のバランスも重視しているように見えます。これまでの代表チームは、“攻撃は最大の防御”を地で行くスタイルで、とにかく相手をシューティングエリアに入れないことを強調していましたが、アンデルセン監督は闇雲にクリアすることを嫌う。ボールを回してキープする戦い方がベースなんです」
 
 また、アンデルセン監督は、選手のメンタル面にも変化をもたらそうとしているらしい。
 
「そもそも代表選手たちは、社会主義制度の中で育ってきたため、サッカーに取り組む姿勢は西側諸国のそれとは異なります。“任務”として、国のために戦うという思いが強いのです。それはメンタルの強さにもつながりますが、それがすべてプラスになるかと言えばそうではありません。時にはその覚悟が強すぎるあまり、自らにプレッシャーを課してしまう逆効果もあるでしょう。アンデルセン監督は就任当初、そういった選手の緊張をほぐそうとしているように感じました。実際に試合を見ても、選手がのびのびとプレーしているように見えます」
 
 ただ、肝心の成績は振るっていない。香港、レバノンと対戦したアジアカップ2019最終予選では3戦を戦ってひとつも勝利を挙げられなかった。11月10日、13日に行なわれた同予選でマレーシアに2連勝したものの、アンデルセン体制では、まだこれといった成果を挙げられていないのが実情だ。
 
 こうした現状について李理事長も「アンデルセン監督は選手の自主性や自律性を大切にしているので、想定通りとはいってませんよね」と苦笑いを浮かべるが、いつまでも悠長でいられないのも事実らしい。「E-1選手権の結果次第では自身の進退も問われるかもしれない」とも語る。
 
 はたして、北朝鮮は今回のE-1選手権で低迷を脱することができるだろうか。アンデルセン監督の真価が問われる大会になる予感だ。

取材・文●李仁守(ピッチコミュニケーションズ)

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