金属行人(12月7日付)

 師走を迎えたが、日本の鉄スクラップ市況は上げ基調が一段と強まっている。すでに関東では高値が3万5千円を上回り、価格としては3年10カ月ぶりの高水準。市中では年末にかけて上げ足を速め、年明けにはメーカー買値で4万円との見方も出ている▼これまでの鉄スクラップ市況は海外要因で上昇する傾向が強かった。しかし、今回の上げ局面はむしろ日本が海外に先行上昇している。最大の理由はビレット輸出で、小棒メーカーを中心に電炉の生産が高水準にあることが挙げられる。鉄筋市況の低迷による採算悪化を食い止めるため、小棒各社がビレット輸出に活路を見いだしている形だ▼日本のビレット輸出は2017暦年で4年ぶりに100万トンに届きそうな勢い。内需堅調な中国がビレット輸出を減らしたため、韓国や台湾、東南アジア向けで日本のビレット輸出が伸びている。当面ビレット輸出は高水準が見込まれるが、その影響がさらなる原料高を招くとすれば小棒メーカーには辛い状況と言えよう▼「ビレット輸出は一時的な痛み止めにすぎない」とは某電炉メーカー首脳の言。本丸である鉄筋棒鋼の市況は、中国や韓国では円換算で7万円を超えている。日本の鉄筋市況の〝独歩安〟を解消しない限り、痛みは続くと覚悟せざるを得ない。

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