【ニュースの周辺】引抜鋼管業界、再編形態が多様化 「素管メーカー主導型」と「オーナー系独自路線」が併存

 引抜鋼管メーカーの新たな再編が相次いでいる。業界の主要納入先である自動車や建機部材メーカーは近年、海外展開が顕著。会社規模や生産量推移などから、既存枠組による生産体制の維持が難しくなってきた。業界団体である全国鋼管製造協同組合連合会(会員20社)の年間生産量も、かつては30万トンを超えていた時期もあったが、直近では20万トン前後で推移している(会員の減員もあり)。

 今回の再編では、引抜鋼管の素管を製造する高炉・専業メーカーが主導する動きがある一方、オーナー系では自社技術を利用した新規分野開拓を狙うM&Aなど、多様な形態が見られる。

 「片倉の鋼管」は、来年1月下旬をめどに新日鉄住金の子会社になる。素管製造技術と冷間引抜加工技術の連携を強化する。

 一方、新日鉄住金は本体の君津製鉄所、日鉄住金鋼管の鹿島製造所、同社子会社のスミテック鋼管でも冷間引抜鋼管事業を行っている。今後新日鉄住金グループは、自社や出資先の生産能力なども考慮した上で、引抜鋼管事業の最適生産体制を検討していくことになりそうだ。

 「旭鋼管工業」は先月にアルミの伸管加工を手掛けていた東洋アルミを買収。「東洋アルミ鋼管」を設立した。普通鋼とアルミを中心とした非鉄金属双方の引抜加工を目指した買収案件は、過去業界ではあまり例がない。旭鋼管工業はグループとして「総合引抜鋼管メーカーへの脱却」を目指す。これまで主力の自動車部品向け以外の光学機器やマグネットロール材など新たな需要分野への拡販に注力。製造拠点や顧客が増えるだけでなく、メカニカル鋼管の軽量化、高機能化部材ニーズを捕捉する観点でもアルミの伸管事業を活用する。

 JFEグループでは、リバースチールの事業再編に絡んで同社の手掛けていた引抜鋼管製造事業を分割。来年4月、同じ引抜鋼管メーカーであるサンキンの子会社としてスタートする。サンキンとしては主力の福知山工場と長田野工場(ともに京都府福知山市)のほか東日本(横浜市)に製造拠点を設けることで供給体制を強化できるメリットがある。

 片倉の鋼管とリバースチールの案件は、同じメーカー主導の再編でも、本体が直接出資をして一貫体制を強化する新日鉄住金グループ、子会社や資材供給面などで関係の深い会社での再編を行うJFEグループとスタンスが異なる。素管供給体制やターゲットとするマーケット、冷間引抜事業に対する考え方の違いなどが垣間見られる。

 素管メーカー主導の再編が続くのか、独自路線の新規事業開拓やオーナー系同士が連携を模索する動きなど、海外事業を含めた来年以降の業界動向も注目される。(後藤 隆博)

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