FA移籍は難しい? 意外に少ない大活躍選手【パ・リーグ編】

楽天・岸孝之【写真:荒川祐史】

今オフは7選手がFA権を行使し、3選手の移籍先が決定

 すっかりシーズンオフとなったプロ野球界。師走になると、球界はストープリーグの話題に包まれる。その中の1つがFA権を行使した選手たちの動向だ。

 今オフはソフトバンクの鶴岡慎也捕手、オリックスの平野佳寿投手、日本ハムの大野奨太捕手、増井浩俊投手、ロッテの涌井秀章投手、西武の野上亮磨投手、阪神の大和内野手と7人の選手がFA権を行使。このうち平野佳寿と涌井秀章はメジャー挑戦を目指しており、残る5選手は国内他球団への移籍となる見込み。既に、増井がオリックス、大和がDeNA、そして野上が巨人へと移籍することが決定した。

 長らくチームの一線級で活躍をしてきた選手の権利と言えるFA権。ほとんどの場合が、好条件を提示されるなどして三顧の礼で新天地に迎え入れられることになる。では、移籍した後、その条件に見合うだけの活躍を見せられているのだろうか。

 2012年から2016年の過去5年間でFA権を行使し、国内他球団に移籍した選手は全部で25人(宣言残留、MLB挑戦は除いている)。同一リーグでの移籍は14選手、セ・リーグ→パ・リーグは3選手、パ・リーグ→セ・リーグが8選手となっており、巨人への移籍は12球団の中で最も多い8選手となっている。

 前回の巨人編に続き、今回はパ・リーグ編。パ・リーグ球団に新天地を求めた選手たちの権利行使前後の成績を見ていこう。これを見ると、FA移籍後に大活躍を収めた選手は意外にも少ないと思うのではないだろうか。(※金額は推定)

平野、寺原は権利を行使し、古巣へと復帰

【2012年】
○平野恵一(阪神→オリックス)2015年オフに現役引退
2011(神)142試合542打数160安打1本塁打29打点6盗塁 .295
2012(神)134試合458打数112安打1本塁打24打点6盗塁 .245
2013(オ)56試合217打数68安打0本塁打14打点1盗塁 .313
2014(オ)120試合452打数121安打1本塁打28打点5盗塁 .268
2015(オ)29試合107打数28安打0本塁打5打点1盗塁 .262

 オリックスでプロとしてのキャリアをスタートさせ、2007年オフにトレードで阪神へと移籍。5年間タテジマを着てプレーすると、2012年オフに権利を行使して古巣へと復帰した。復帰初年度は右ふくらはぎの肉離れで出遅れるなど故障に悩まされ、56試合止まり。2014年は120試合に出場したが、2015年には再び故障が相次ぎ、このシーズン限りで現役を引退した。今季は阪神で2軍でコーチを務め、来季は1軍打撃コーチとなる。

○寺原隼人(オリックス→ソフトバンク)
2011(オ)25試合12勝10敗0H0S 170回1/3 162安打112三振 3.06
2012(オ)16試合6勝8敗0H0S 101回 114安打61三振 3.92
2013(ソ)16試合4勝7敗0H0S 93回 97安打56三振 4.65
2014(ソ)5試合1勝4敗0H0S 27回2/3 26安打14三振 4.88
2015(ソ)21試合8勝3敗2H0S 83回2/3 71安打58三振 3.44
2016(ソ)14試合2勝1敗2H0S 13回1/3 18安打10三振 4.05
2017(ソ)24試合1勝2敗3H0S 42回1/3 45安打28三振 4.25

 日南学園高から2002年にソフトバンクの前身であるダイエー入り。2006年オフにDeNAにトレードで移籍。2010年オフに再びトレードでオリックスへと移籍した。2011年には自己最多タイの12勝をマークし、2012年オフにFA権を行使。3年総額4億円で古巣へ復帰した。ソフトバンク復帰後は先発、中継ぎ両面で起用されているが、8勝を挙げた2015年が最も結果を残している。

【2013年】
○涌井秀章(西武→ロッテ)
2012(西)55試合1勝5敗3H30S 63回 66安打40三振 3.71
2013(西)45試合5勝7敗13H7S 92.1回 89安打79三振 3.90
2014(ロ)26試合8勝12敗0H0S 164回2/3 158安打116三振 4.21
2015(ロ)28試合15勝9敗0H0S 188回2/3 178安打117三振 3.39
2016(ロ)26試合10勝7敗0H0S 188回2/3 195安打118三振 3.01
2017(ロ)25試合5勝11敗0H0S 158回 156安打115三振 3.99

 横浜高校から2004年のドラフト1位で西武に入団。2006年から5年連続2桁勝利をあげ、2012年にはストッパーも経験。2013年オフにFA権を行使してロッテへ。移籍後は2015年に15勝を挙げ、3度目の最多勝に輝くなど、ローテの柱として4年連続規定投球回に到達。今オフは2度目のFA権行使で、メジャー挑戦を目指している。

○山崎勝己(ソフトバンク→オリックス)
2012(ソ)85試合86打数17安打0本塁打2打点0盗塁 .198
2013(ソ)91試合139打数35安打1本塁打20打点0盗塁 .252
2014(オ)60試合65打数7安打0本塁打4打点0盗塁 .108
2015(オ)79試合147打数30安打0本塁打14打点1盗塁 .204
2016(オ)43試合66打数10安打0本塁打0打点0盗塁 .152
2017(オ)17試合18打数2安打0本塁打2打点0盗塁 .111

 報徳学園高から2000年のドラフト4位でソフトバンクの前身ダイエーへ。ダイエー、ソフトバンク時代は控え捕手としての起用が多く、2013年オフにFA権を行使してオリックスへ加入。移籍後は伊藤光との併用で1年目60試合、2年目79試合と出番を増やしたが、若月健矢の台頭によって出場機会は減少。今季は17試合出場にとどまった。

鶴岡は今オフに2度目のFA権を行使し、古巣・日本ハムへの復帰が決定的に

○鶴岡慎也(日本ハム→ソフトバンク)
2012(日)116試合289打数77安打0本塁打25打点3盗塁 .266
2013(日)114試合244打数72安打2本塁打26打点1盗塁 .295
2014(ソ)98試合162打数35安打0本塁打25安打0盗塁 .216
2015(ソ)56試合128打数25安打1本塁打9打点1盗塁 .195
2016(ソ)103試合231打数58安打2本塁打26打点1盗塁 .251
2017(ソ)29試合28打数9安打3本塁打5打点0盗塁 .321

 樟南高、三菱重工横浜を経て、2003年から日本ハムでプレー。244打数72安打で打率.295をマークした2013年オフにFA権を行使し、4年総額で最大5億円の好条件でソフトバンクへ移籍。移籍後は細川(現楽天)や高谷、そして今季は甲斐といった面々の控え捕手としての役割だった。今季は29試合出場止まり。オフに再びFA権を行使。古巣・日本ハムへの復帰が決定的となっている。

○中田賢一(中日→ソフトバンク)
2012(中)22試合7勝10敗0H0S 140回 119安打106三振 2.83
2013(中)40試合4勝6敗15H0S 98回 85安打83三振 3.40
2014(ソ)25試合11勝7敗0H0S 145回 139安打116三振 4.34
2015(ソ)24試合9勝7敗0H0S 155回1/3 134安打130三振 3.24
2016(ソ)17試合7勝3敗0H0S 89回2/3 64安打67三振 3.01
2017(ソ)18試合7勝6敗0H0S 86回2/3 82安打78三振 4.57

 八幡高から北九州市立大を経て、2004年のドラフト2位で中日へ。2007年に14勝を挙げ、2013年オフに権利を行使。4年契約の最大総額6億円で地元のソフトバンクに入団した。移籍1年目に自身2度目の2桁勝利をマーク。2年目も9勝をマークしたが、昨季から若手投手の台頭もあり、登板数を減らしている。

【2014年】
○小谷野栄一(日本ハム→オリックス)
2013(日)139試合512打数141安打3本塁打46打点2盗塁 .275
2014(日)84試合243打数72安打4本塁打29打点0盗塁 .296
2015(オ)56試合183打数54安打4本塁打22打点0盗塁 .295
2016(オ)50試合177打数44安打4本塁打13打点1盗塁 .249
2017(オ)130試合470試合130安打6本塁打47打点0盗塁 .277

 創価大から2002年のドラフト5位で日本ハム入り。2010年には109打点で打点王に輝き、2014年オフにFA権を行使して3年総額3億円でオリックスへ。ただ、移籍後は故障に悩まされて2年間は50試合ほどの出場に終わった。3年目の今季は130試合に出場し、4年ぶりに規定打席に到達した。

今江は移籍後に故障が相次ぎ、木村は入団テストを受ける異例の展開に

【2015年】
○今江年晶(ロッテ→楽天)
2014(ロ)120試合445打数120安打10本塁打54打点1盗塁 .270
2015(ロ)98試合373打数107安打1本塁打38打点2盗塁 .287
2016(楽)89試合317打数89安打3本塁打23打点2盗塁 .281
2017(楽)51試合128打数32安打1本塁打10打点0盗塁 .250

 PL学園高校から2001年のドラフト3位でロッテへ。1年目から1軍で起用されると、4年目の2005年にレギュラーに定着して打率.310をマーク。2010年に.331、2013年に.325をマークし、2015年オフに権利を行使。3年総額6億円で楽天へと移籍した。移籍1年目は故障が相次ぎ、2005年のレギュラー定着後は最少となる89試合出場に終わる。今季も怪我に悩まされて51試合に出場に終わった。

○木村昇吾(広島→西武)
2014(広)101試合238打数62安打1本塁打13打点4盗塁 .261
2015(広)72試合93打数25安打0本塁打8打点2盗塁 .269
2016(西)38試合95打数21安打0本塁打5打点3盗塁 .221
2017(西)3試合6打数1安打0本塁打0打点0盗塁 .167

 2002年のドラフト11位で愛知学院大から横浜へ。2007年オフにトレードで広島へと移籍。2011年にキャリアハイとなる106試合、2014年にも101試合に出場した。2015年オフにFA権を行使して広島を退団。だが、権利行使後も移籍先はなかなか決まらず、春季キャンプで西武の入団テストを受ける異例の形に。これに合格したものの、移籍1年目の2016年に右膝前十字靭帯を断裂。育成契約となった今季、負傷が癒えた6月に支配下に復帰したものの、3試合出場に終わり、オフに戦力外通告を受けた。

【2016年】
○岸孝之(西武→楽天)
2015(西)16試合5勝6敗0H0S 110回1/3 75安打91三振 3.02
2016(西)19試合9勝7敗0H0S 130回1/3 123安打104三振 2.49
2017(楽)26試合8勝10敗0H0S 176回1/3 141安打189三振 2.76

 名取北高から東北学院大を経て2006年の希望入団枠で西武へ。西武でプレーした10年間で7度の2桁勝利をマークし、2014年には最高勝率のタイトルを獲得した。2016年オフにFA権を行使し、4年総額16億円で地元・仙台を本拠地とする楽天へ移籍。移籍1年目は2桁勝利は逃したが、先発ローテの一角を担って8勝。則本とともに2枚看板としてチームを支えた。

(Full-Count編集部)

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