【新社長インタビュー】〈千代田鋼鉄工業・坂田基歩氏〉都内立地電炉の意義実証 〝地産地消〟のリサイクルに注力

 千代田鋼鉄工業(本社・東京都足立区)は綾瀬工場(東京都足立区)で細物の鉄筋用棒鋼、市川工場(千葉県市川市)でカラー鋼板を製造している。創立70周年を来年に控えた同社では経営の若返りを図るため、11月28日付で専務だった坂田基歩氏が社長に就任。前社長の正孝氏は取締役会長となった。3代目の社長として経営の舵取りを担う坂田基歩社長に抱負や今後の取り組みを聞いた。(小堀 智矢)

――社長として抱負は。

 「まずは社長就任に際し、多くの取引先から祝意や祝いの品をいただき、御礼を申し上げたい。経営の建て直しを託されて前社長が社長に就いたのは38歳。当時の当社を取り巻く環境は非常に厳しかった。それに比べれば格段に恵まれたバトンタッチだと思う。ただ、これからの少子高齢化や慢性的な働き手不足、世界的な鉄鋼業の大競争時代を考えると建材製品をメーンとする当社の将来は順風満帆とは言えない。しかし、鉄筋の最大の需要地であり、鉄スクラップの最大発生地である都内に電炉をもつ優位性は必ずある。都内は2020年以降もさまざまなプロジェクトが目白押しで、一定の需要は見込める。高度成長期に建てたマンションも大半が新耐震の基準を満たしておらず、建て替えが進むだろう。特に都営住宅などは老朽化と首都直下型地震への備えで持続的に建て替えが計画されている。こうしたスクラップ&ビルドの取り組みを行政や需要家と一緒にやっていきたい」

千代田鋼鉄工業・坂田社長

――御社にとっての課題とその対応策は。

 「細物の鉄筋棒鋼は需要構造が在来工法から閉鎖型フープ筋、住宅基礎、PC主体など工場でのユニット加工が増えている。鉄筋加工機も自動化が進んでおり、鉄筋に対しても均一で高品質な製品を求める声が日増しに高まっている。このため、当社としても継続的な品質向上への投資が必要不可欠になっている」

 「カラー鋼板も用途は建材だが、非常に厳しい色管理が求められるほか、微細な傷であっても認められない。高い塗膜性能や長期耐久保証も求められるため、高品質な商品が製造できるカラー鋼板ラインへの設備投資やさらなる塗料の改良を検討していく必要がある。他社との差別化という点では成形や加工事業などを深化させ、サービスを強化。市川工場には大型スリッターラインを導入し、来年から稼働する予定だ。成形機についても順次導入を予定しており、付加価値を付けたサービスを拡充していく」

――これから力を入れていく取り組みは。

 「自治体をはじめ、需要家の皆様とともにコンパクトな建設リサイクルに取り組みたい。原料や製品の輸送という視点でも地場産業の重要性を説き、都内立地の電炉として意義を実証していきたい。電炉でのリサイクルに関しては当社だけでなく、鉄筋ユーザーや建設業、施主など関係者が皆で共通の意識をもつことが大事だと思う。このため、新たな観点で当社のリサイクル事業を紹介する動画も作成した。啓蒙活動には10年ないし20年かかるかも知れない。鉄筋は熟練工不足やS造に比べ工期が長いなど課題はあるが、業界全体で知恵を出し合ってRC造を普及させる活動も必要だろう」

――社長として目指す会社の姿は。

 「米国の電炉メーカーは従来の『ミニミル』から、更に品種を絞り込んだコンパクトな『マイクロミル』化している。特に鉄筋メーカーは規模より需要立地に重きを置いているようだ。当社もこうした姿を模範とし、都内に立地する唯一の電炉工場として堅実に〝地産池消〟のリサイクルに取り組んでいく。目指すのは小さくても特色があってキラリと光る会社だ。従業員や協力会社の社員はもとより、当社に関わる全ての取引先の皆様がささやかな幸福を感じられるような会社でありたい」

プロフィール

 歴史好き。NHKの大河ドラマは「欠かさず見ている」。特に日本の戦国時代や前近代史を好む。愛読書は司馬遼太郎の「坂の上の雲」。好きな言葉は「やらずに後悔よりやって後悔」。「だからいつも後悔ばっかり」とは本人の談。

略歴

 坂田 基歩氏(さかた・もとぶ)1998(平10)年日本大学文理学部卒、同年4月三井物産鉄鋼建材(現・三井物産スチール)入社、2003年10月千代田鋼鉄工業入社、カラー鋼板営業部長、04年11月取締役カラー鋼板営業部長、06年11月取締役営業本部長、08年11月常務取締役営業本部長、15年11月専務取締役、11月28日付けで社長就任。1976(昭51)年2月11日生まれ、東京都出身。

© 株式会社鉄鋼新聞社