【日本シャフト製造、創業140周年】〈小川哲洋社長に聞く〉新技術や設備、環境対策を先取り 「小口・納期・品質」対応の加工強化

 今年創業140周年を迎えた磨棒鋼メーカーの日本シャフト製造(本社・東京都荒川区)は、きょう8日に創業記念式典を開催する。同社のこれまでの歩みや現在の姿、そして将来に向けての展望を小川哲洋社長に聞いた。(伊藤 健)

――創業からこれまでの歩みについて。

日本シャフト・小川社長

 「1877(明10)年に曾祖父の小川仙太郎が神田で金物屋を創業したのが始まりと聞いている。1900年初頭には早くも磨棒鋼に着眼し、取り扱いを開始。そして19年に自前工場を建設して伸線業に参入した。関東地区では最も古い時期から冷間引き抜きを始めた一社だ」

 「昭和初期ごろは『仙寿号』という名前の自転車を製造し、三越デパートに納めていた時期もあった。その後、戦時中は鋼材を含めたあらゆる物資が配給制となり、磨棒鋼の製造は厳しい状況に追い込まれた。そして終戦の年、空襲で神田の本社と荒川工場が被災した」

 「荒川工場は当時珍しかった鉄筋コンクリート製だったため、幸いにして早期に復旧することができ、取引先などの伝動軸シャフトの修理や再生を引き受け、戦後の産業界復興の一翼を担った」

――転機となった出来事は。

 「当社は、現在主流となっているショットブラストや特殊鋼の引き抜きに必要な熱処理炉、研磨のセンタレス機などの導入が非常に早かった。特にショットブラストは酸洗に代わる環境配慮型の設備として、昭和40年ごろから試行錯誤を繰り返しながら何とか稼働に漕ぎつけた。当社は常に新しい技術や設備、またそれらを使った需要を先取りしてきた印象が強い」

 「また67年には現在の主力工場である千葉工場の建設、その後の荒川工場から郊外への移転・集約も業界ではかなり早かった。千葉工場の建設にあたっては、手賀沼漁業組合との粘り強い交渉、万全な環境対策などを誠心誠意説いて、ようやく着工に至ったと聞いている」

――日本シャフト製造の強み、特長とは。

 「丸棒は最大径100ミリまで冷間引き抜きが可能だ。中径以上、特に太径の引き抜き加工が当社の特長、強みとなっている。取り扱い品種も幅広くラインアップをそろえており、口径も丸棒を中心に六角や四角、さらに異型材と各サイズに対応している」

 「また2005年からは機械加工部門を設立して、NC旋盤機や油圧式転造盤、切断機などの加工設備も充実してきた。冷間引き抜きから製品加工まで、〝あらゆるニーズに対応できる一貫生産〟体制を構築しているのも当社の強みだろう」

――次の10年、創業150周年に向けて。

 「5年前に千葉工場の事務所棟の建て替えとともに、油処理対策として、バイオの油漏洩吸収剤〝ゼクター〟をオールイントレード(本社・千葉県市川市)から調達し、油による土壌汚染防止やオイルトラップの設置を進めてきた。この取り組みは、環境省の『環境技術実証事業(ETV)』を取得している。環境への配慮はこれからも最優先に考えていきたい」

 「中長期的には国内の磨棒鋼の需要は減少傾向が否めない。最近の〝軽薄短小〟の流れの中で、より小口対応、迅速対応、加工対応といったニーズが高まっている。品質面の向上とともに、これらのニーズに対応して取引先との信頼を高めて、今後も磨棒鋼業界で存続する会社にしていきたい」

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