名古屋工業大学、3Dプリンタ用金属粉末を開発 内部欠陥など低減

 名古屋工業大学は5日、革新的な積層造形(3Dプリンタ)用金属粉末の開発に成功したと発表した。従来材に比べて内部欠陥を低減できるほか高品質な造形品の製造が可能になる。またこれまで3Dプリンタが困難とされてきた金属種でも適用可能な手法で、今後の3Dプリント技術の発展に寄与すると期待されている。

 渡辺義見教授らの研究グループは、鋳造アルミニウムなどの組織微細化に利用される異質核生成理論を積層造形技術に応用して組織の微細化を実現した。今回の研究では、航空機部材などに用いられるTi―6Al―4V合金を母材金属とし、これに対する異質核粒子としてTiC粒子を選定して実験を実施した。

 それぞれの粉末をあらかじめ混合して作製した積層造形用金属粉末を新たに開発。これを用いて、粉末床溶融法により積層造形品を作製した結果、母材金属粉末のみで積層造形した従来品と比較して、相対密度の向上と初晶粒組織の微細化が確認された。

 この実験により、今回開発した新規積層造形用金属粉末を用いることで、より高品質な積層造形品の製造が可能であるとともに、造形時に必要なレーザー出力の低減を確認した。これにより造形プロセスの省エネルギー化、あるいは低品位なレーザーを用いた造形でも高品質な造形体の製造が可能性が広がった。

 名工大は今回の手法は、母材金属に合わせて異質核粒子を選定することで、さまざまな金属種・合金種を用いた積層造形法に幅広く適用可能であると説明。今後は、純アルミニウムなど積層造形技術に応用が期待されるほか、金属や合金について同様の効果の確認、添加する異質核粒子の形状やサイズ、添加量を最適化し、さらなる性能発揮を目指すとしている。

© 株式会社鉄鋼新聞社