サッポロの株主優待はお得?約1000円相当のビール等

ビール業界で国内シェア4位に位置する大手の一角サッポロホールディングス<2501>。100株の場合、年間1000円相当のビール、あるいは飲料食品セットがもらえる株主優待は大人気!そんな同社の株主優待が魅力的なのかどうかに迫ります

サッポロホールディングス<2501>の株主優待はビール、あるいは飲料食品セットがもらえる

サッポロホールディングス<2501>はビールなど国内酒類を主力に、海外事業、食品・飲料、外食、不動産事業を展開する持ち株会社。ビール業界で国内シェア4位に位置する大手の一角です。

ビールや飲料のイメージが強い同社ですが、実は不動産事業に強く、営業利益の8割を不動産賃料収入が稼いでいます。同社は人気スポットである恵比寿ガーデンプレイスをはじめとする都心の賃貸物件を保有しており、安定収益を得ているところも強みの一つです。16/9月には新たに銀座に「銀座プレイス」が開業し、これが業績に通期で寄与してきています。稼働率はいずれも98%以上の高水準で、首都圏の高いオフィス需要が追い風となっています。

一方、祖業であるビール事業も、女性や若者を狙った商品開発や、販促などの取り組みが奏功して前年比プラスで推移しています。ベトナムやシンガポール事業のテコ入れなど課題もありますが、国内では一定の需要を捉えることに成功しているようで、海外ででた穴を補っています。

市場縮小の傾向が続く国内酒類業界ですが、「黒ラベル」や「ヱビス」など強みのブランドを中心に、販売が堅調に推移しており、設備投資にも積極的であることから、復調の継続が期待できそうです。この設備投資に向けた資金の投下が積極的なことから、財務基盤は借り入れが厚い状態。

もっとも、不動産業を営んでいることから借入金が多くなるのは仕方ありません。自己資本に対する借入比率はピークの2倍から1.4倍にまで低下している点を評価すると、事業はうまくいっていると評価できます。今回はそんな同社の株主優待が魅力的なのかを検証していきたいと思います。

【銘柄名】サッポロホールディングス【市場:コード】東証1部【予想配当+予想優待額面利回り】:1.5%【2017年12月6日株価】3,495円【株主優待獲得最低投資額】 100株=34万9500円【今期予想現金配当(1株あたり)】41円【株主優待権利確定月】 12月末【優待内容】自社製品(ビール詰め合わせセットか食品・飲料詰め合わせセット)

※詳しくは同社のHPをご覧ください。

※今回は100株を購入して年間で1000円分のビール詰め合わせセットか食品・飲料詰め合わせセットを獲得したケースを想定しています。株主優待は1000円で評価し、利回り計算を行っています。なお、200株以上の場合は2000円相当となり、サッポロライオンチェーン等の20%割引優待券5枚もつきます。さらに、1000株以上の場合は3000円相当となります。

付加価値製品でビール回帰狙う業界4位のビール大手~不動産事業者としても成長~

サッポロホールディングスはアルコール販売で業界シェア4位の企業です。同社の歴史は、1876年に政府の開拓使が北海道札幌市に建設した開拓使麦酒醸造所に始まります。ビール類では「黒ラベル」や「ヱビス」を主力ブランドに、国内大手に数えられるまでに成長し、現在国内シェア17%、4位を占めています。2003年に持ち株会社体制となり、ビールなど酒類、食品・飲料、外食、不動産の4本柱で事業を展開しています。

ちなみに、ビール業界はアサヒからサッポロまでの大手4社でシェア99%を構成しています。2016年12月期の売上構成比は国内酒類52%、国際12%、食品・飲料25%、外食5%、不動産4%、その他1%。海外は、北米を中心に売上の約16%を稼いでいます。2006年のカナダスリーマン社、2011年にポッカコーポレーション、2016年にみそを製造・販売する宮坂醸造を買収するなど、国内外でM&Aを通じた事業基盤強化を進めてきました。

スリーマン社は、10年間で販売高1.5倍、営業利益2.8倍に成長。ポッカもスープ「じっくりコトコト」や飲料「ポッカレモン100」が好調に売り上げを伸ばしており、事業拡大に寄与しています。

新たな成長に向けた取り組み、新ジャンルや発泡酒?いえ、「ビール回帰」!

同社の製品は、爽快感や軽さ、のど越しがウリのアサヒやキリンとは違って、コクや香りを楽しむような「味わうビール」をウリにしている印象があります。3月に発売された「華みやび」はタブを開けた瞬間香りが来る薫り高く濃厚な味わいです。

最近クラフトビールが人気となっており、高価格帯のビールもスーパーでよく見るようになりました。ビール離れが叫ばれていたビール業界ですが、ビール回帰の波に乗った商品開発が活発化しています。ビール市場は、人口減とビール離れによって1994年をピークに20年後の2014年には市場規模は3/4の約540万キロリットルまで縮小してしまいました。

この間、ビール業界では1990年代にはじまったデフレ時代に対応すべく発泡酒や第三のビールが開発され(生みの親は同社です)、またハイボールやワインなどが多種多彩なアルコール飲料が手軽に飲めるようになるなど、ビール離れが進行したのでした。いわゆる成熟市場となったわけで、新たな成長への道は、海外進出やM&Aによる事業拡大、あるいは新製品の開発となります。

同社でも2006年に買収したカナダビールメーカーの業績寄与が顕著ですが、サントリーの米蒸留酒大手ジムビーム買収やキリンのブラジルビール会社の買収、アサヒの英ビール大手SABミラー傘下欧州ビール事業4社の買収など、各社海外の市場開拓を強化しています。

一方新製品の開発も活発で、毎週のように新商品が発売されています。同社は実は発泡酒や新ジャンルを生み出した市場開拓者だったのですが、いまや他社に抜かれて同社商品はランク圏外となっています。新しい市場を開拓したはいいけど、キリンやアサヒとの競争には勝てなかったということです。

こういった事情もあったのでしょう、同社は2014年頃から改めてビールの強化に努め、「2杯目からも飲んでもらえる“味わう”ビール」の開発に取り組んできました。2017年12月期には「ビール復権宣言」というスローガンを掲げ、主力ブランドを強化してきました。それが「黒ラベル」と「ヱビス」ブランドです。17年2月期はこれらの取り組みが奏功し、国内ビールが好調に推移しています。

不動産事業、酒類事業の利益を圧倒!

同社の事業構造のポイントとして見逃せないのが、「利益の柱=不動産事業」の構図。不動産事業は売上高こそ全体の4%程度ですが、営業利益の構成比は80%以上を占めています。本業の酒類販売より不動産で稼いでいるこの構造から、「サッポロ“ビル“」や「サッポロ不動産」などと揶揄されることもありますが、賃料収入という安定収益基盤を持っているのは強みとしてみるべきです。

同社は札幌、恵比寿、銀座などの好立地に、恵比寿ガーデンプレイスをはじめ都心を中心とする賃貸オフィスや商業施設を保有しており、これが賃料収入による安定収益基盤となっています。

好調な恵比寿ガーデンプレイスに加え、16年9月には東京・銀座4丁目交差点の旧サッポロ銀座ビルを再開発した「GINZA PLACE」が開業し、今期からの通期寄与が不動産事業の収益力を底上げしています。

不動産事業が好調となればそれだけ利益が伸びやすいということになり、ビールなど本業の成長に向けた投資をしやすい。好景気を背景に不動産業界、特にオフィス賃貸ビジネスは、首都圏を中心に入居率が高水準で推移しており、同社にとっても追い風となっています。

国内ビールと不動産事業好調で、17年12月期増収増益の見通し

17年12月期第3四半期までの業績は売上が2.2%増の4008億円、純利益が2.9%増の54億円となっています。海外、外食が不調も、国内ビール、不動産事業は好調に推移しました。国内ビール・北米酒類・レモン/スープなどの注力してきた事業が堅調です。一方、利益面では減益となりましたが、海外事業の低調に加え、積極的なブランド投資の実施と物流費の高騰により固定費が増加したことが影響しました。

国内酒類は最盛期の7-9月に天候不順で売り上げが伸びなかったことが下振れ要因となりましたが、ビールが好調に推移しました。国内ビールは「黒ラベル」の販促が効いて前年比3%増、また3月発売のヱビス「華みやび」の好調でヱビスが1%増となり、国内ビールは2%の販売数量増となりました。これを受けてビール売上は全体の63%(前期は60%)に拡大。製品ミックスが改善したことが伺えます。

海外は米国販売会社のサッポロUSA社とカナダのビールメーカーであるスリーマン社がいずれも成長基調にあり、北米のビール事業は順調に拡大しています。また、好調なところでは韓国・台湾向けの輸出で、前年同期の2倍近い売上を記録しました。一方、ベトナム社はの酒税増税に加え、販促方法の変更により取扱店が減少した影響で売上が減少。販促費の見直しや製造移管など構造改革を進行中です。

食品飲料は「じっくりコトコト」シリーズの好調でスープが7%の売上増。またレモン食品では「ポッカレモン100」の売上が堅調に推移し9%の売上増となりました。国内外食では「カフェ・ド・クリエ」が好調に推移しました。経営統合したポッカの業績寄与が顕著です。

国内は堅調ですが、海外の業績が収益を悪化させているようです。シンガポールの業績の低迷に加え、一部の国でSugar taxの影響により売上が鈍化しているためとされ、早期に対応されるべきです。

外食でも国内は堅調。サッポロライオンの既存店売り上げが堅調に推移しているほか、1Qにオープンした広島、新横浜のヱビスバーも順調に業績寄与しています。一方、食材や人件費の高騰に加えシンガポールの低迷が足を引っ張る形で大幅減益となっています。不動産事業は特に下振れ要因もなく、総じて好調です。「恵比寿ガーデンプレイスタワー」をはじめ首都圏の各保有物件が高稼働率を維持しています。

本業の伸び+不動産賃貸事業の伸びに期待

前期16年12月期は7期連続増収、そして3期ぶりに増益となるなど事業が好転したことが確認されました。国内酒類におけるビールの販売好調と、恵比寿ガーデンプレイスの高水準の稼働率が維持されていることから、今期17年12月期も増収増益となる見込みとなっています。

財務内容についてですが、借入金は多いのですが、不動産を運営しているという意味では許容範囲内です。ちなみに、現金等を差し引いたネットDEは2255億円で自己資本の1.4倍あります(ネットDEレシオ)。短期借入金約888億円に対して当座資金が948億円。また流動比率は0.7倍、固定長期適合率(固定資産/自己資本+長期借入金)は116.3%と指標だけでは長短ともややきつめの財務内容です。

ただ、その一方で、財務内容が改善していることは評価すべきところです。同社の有利子負債は2012年12月期末をピークに削減が進展しています。その結果、有利子負債自己資本比率は、12年12月期の2.0倍から今期には1.4倍まで縮小し、改善してきました。

引き続き有利子負債の縮小に努めるとのこと。そして同時に同社では、新中期経営計画(2017年-20年)で掲げるように、「食」分野の拡大加速やグローバル展開の推進に向けた成長投資を実施するとしています。

つまり借入は、成長に向けた投資に向けられています(できれば、既存事業のキャッシュ創出力を高めて投資原資を確保したいところ)。

2017/12期3Q時点での投資金額は、293億円(通期で351億円を計画)。このうち設備投資額は約115億円。内訳を見ると、那須工場ワンウェイ瓶対応工事など「酒・食・飲」関連に約72億円、恵比寿ガーデンプレイスのバリューアップ等に約23億円、不動産事業のSGM社におけるグループインフラ最適化に約15億円となっています。

利益けん引役の不動産事業に振り分けながら、本業の事業成長にしっかり投資していることがわかります。

借入金の多い企業ですが、現在、事業が安定的に成長していることや、その好調な事業基盤の上で投資を行っていることを考慮すると、現在の時点では懸念することでもないかと思います。16年12月期実績ROE(自己資本利益率)は8.4%。17年12月期については8.8%の見通しです。改善基調であることが重要で、この点評価されるところです」。

以上、業績の安定感と緩やかな成長を期待出来る同社です。株価は長期に右肩上がりで推移しています。株主優待や現金配当の利回りは低めですが、調整したところで購入し、株主優待を楽しみながら長期で保有するには良い銘柄のように思います。その観点では同社の株主優待はお得ということが出来るでしょう。

(文:戸松 信博)

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