【トップインタビュー 新関西製鉄・田邊寛隆社長】早期に「1製鋼・2圧延体制」へ 平鋼の新規需要を開拓

――前期業績と今期見通しを。

 「前期(17年9月期)は残念ながら赤字で締めくくることになった。販売数量はほぼ横ばいだったが、鉄スクラップ価格の高騰を販価に転嫁しきれず、メタルスプレッドが大きく圧縮された結果だ」

 「平鋼の国内需要はここ数年、年間90万トンで推移しており、当社の受注生産数量も月2万5千~2万6千トンで低迷したままだ。今期も需要が大きく回復するめどは立たず、今の需要規模でいかに黒字体質に切り換えられるかがポイント。その中で、この1年をかけて取り組んできたあらゆるコスト削減努力の成果が出始めており、ようやく今期は、今の需要規模のままでも月次ベースで黒字化のめどが立ってきた」

新関西製鉄・田邊社長

――当面の経営計画について。生産・販売面では。

 「生産では、減少した需要規模にいったん、身の丈を合わせるべく、星田工場の電気炉廃棄と、小形平鋼が主体の第二圧延ラインでの生産品目を第一圧延ラインに集約した後、二圧の廃棄を決めた」

 「一圧に移管して製品の形状や品質が安定的に確保できることを見極めてから廃棄作業に入るため、実際の廃棄は来年度以降になるが、この作業によって当社は堺と星田の2工場体制のままではあるが、電気炉1基(堺)と圧延ライン2基(堺・星田各1基)に設備集約できる」

 「この新体制への移行に向けて設備投資も進める。二圧・仕上げミル・モータのパワーアップや制御装置の更新、加熱炉や精整ラインの能力アップなどだ。二圧への移管作業はこれらの設備投資と、操業技術の移行などを含めて1年以上の時間がかかるが、できるだけ早期に新生産体制を確立させたい」

――販売面では。

 「平鋼需要が漸減する中で、いかにこの需要減を食い止めるか。それには新たな用途開発、用途提言しかないと考えている」

――コスト対策では。

 「この1年間、あらゆる面でのコスト低減に取り組んできたが、まだ不十分だ。操業方法の見直し、要員の見直し、在庫方法や場所の見直しや、無駄の排除などをさらに進めて、さらなるコストダウンを図っていく。加えて、2工場に分かれているハンディをはね返すべく、今後、なお一層のシステム化、自動化、AI化を進めていく」

――堺と星田の2工場体制による1製鋼(堺)2圧延(堺・星田)体制に向け、生産の整流化、コスト削減をさらに推進していくということですが、さらに中期的展望に立って、新関西製鉄の画をどう描いていきますか。

 「まず鉄鋼全体でみると、全世界の鉄鋼備蓄量が年間10億トン強のペースで増え続け、現在310億トンと言われる備蓄量は2050年には550億トンになると言われる。そこでは連動して鉄スクラップ発生量も増加し続けることになる。このため世界は真剣にさらなる循環型社会の実現を目指していくことになる。粗鋼生産量に占める電炉鋼比率がわずか20%に過ぎない日本でも今後は電炉鋼のニーズが高まるとみている。一例では、『LEED法』という環境評価基準に『グリーンビルディング認証』というのがあるが、建設されたビルに電炉鋼を使用すると評価ポイントが上がるといった仕組みが世界で広がってきている」

 「そうした中で、当社の登録商標商品で当社が得意とする『ワイド・フラット』(広幅平鋼)の需要を拡大すること。これこそが循環型社会の実現に向けて当社が貢献できる使命であると考えている。そのためにも電炉鋼の必要性、品質、加工対応力なども含めて需要を喚起していく作業が重要になる」(小林 利雄)

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