過去10年で12選手だけ ホークス東浜も掲げる「200イニング」の高い壁

ソフトバンク・東浜巨【写真:藤浦一都】

今季24試合に先発して16勝4敗、最多勝獲得の東浜が掲げる大きな目標

 今季のソフトバンク日本一の原動力と言えば、この男だろう。東浜巨投手。先発ローテの一角を開幕から担うと、ほぼ1年間ローテを守り抜き、パ・リーグ最多となる16勝をマークした。交流戦開幕や、リーグ戦再開、後半戦開幕、そしてクライマックスシリーズファイナルステージ初戦と、シーズンの節目となる試合で先発マウンドを託された。

 12月6日、ヤフオクドーム内の球団事務所で行われた契約更改交渉。日本一に大きく貢献した東浜は、球団からも1年の働きを高く評価され、交渉の末に今季推定年俸3600万円から2.5倍、5400万円増となる9000万円という大幅アップを勝ち取って契約を更改。その後の会見では「イニング数にこだわりたい。200イニングを目標に、最低でも180イニングは投げたい」と来季の目標を掲げていた。

 200イニング――。多くの先発投手が目標に掲げる数字である。東浜の場合は今季24試合に先発して投げたのは160イニングだった。40イニングの積み増しは、言うほど容易なものではない。今季はリーグ優勝決定後に腰の張りを訴えて離脱があった。離脱がなければ、26試合前後の先発数となっただろう。その26先発で200イニングに届かせるためには、1試合平均7.69回が必要となる。時に完投、そして大半で8回まで投げなければ、200という数字には届かない。

昨季と今季は達成者なし、ここ10年では前田健太が4回達成

 近年は投手分業制、先発中6日が広まり、200イニングに到達する選手は決して多くない。今季はセ・リーグが巨人・マイコラスの188回、パ・リーグは西武・菊池雄星の187回2/3が最多で、昨季に続き200イニング到達者はなし。2008年から今季までの10年間で200投球回を達成したのは外国人含めて16選手25回あり、日本人に限定すると12選手、のべ21回で、以下の面々になる。

2008年 グライシンガー(巨、206回)岩隈久志(楽、201回2/3)ダルビッシュ有(日、200回2/3)

2009年 涌井秀章(西、211回2/3)

2010年 前田健太(広、215回2/3)久保康友(神、202回1/3)ダルビッシュ有(日、202回)岩隈久志(楽、201回)金子千尋(オ、204回1/3)成瀬善久(ロ、203回1/3)

2011年 澤村拓一(巨、200回)バリントン(広、204回1/3)前田健太(広、216回)能見篤史(神、200回1/3)ネルソン(中、209回1/3)田中将大(楽、226回1/3)ダルビッシュ有(日、232回)

2012年 前田健太(広、206回1/3)成瀬善久(ロ、200回2/3)

2013年 田中将大(楽、212回)金子千尋(オ、223回1/3)

2014年 メッセンジャー(神、208回1/3)則本昂大(楽、202回2/3)

2015年 前田健太(広、206回1/3)大野雄大(中、207回1/3)

2016年 なし

2017年 なし

ソフトバンクでの達成者は2006年の斉藤和巳

 岩隈久志やダルビッシュ有、田中将大、前田健太と、現在は米MLBでプレーする球界屈指の投手たちの名前が並ぶ。ここ10年では前田の4回を最多に、ダルビッシュが3回(NPBでのキャリアでは4度)、岩隈と田中が2回達成し、成瀬善久と金子千尋も2回ずつ200イニングに到達している。いずれも球界を代表した投手ではあるが、毎年のように達成出来るわけでない。シーズンを通して安定した投球を続け、イニングを投げる必要があり、その難しさが伺える。

 200イニングに到達するには、最低でも7回ないし8回は投げ抜くことが求められる。しかもシーズンを通して安定した投球を続け、チームから長いイニングを任されるだけの信頼も必要だ。今季24試合中13試合で、イニング途中でマウンドを降りていた東浜。来季に向けて「しっかり任されたイニングを投げ抜くというところですかね。今年はイニング途中での降板が多かったと思いますし、まだいけるまだいけるという思いで、悔しく降板する試合も多かったので、そういう思いをしないようにしたい」とも語っていた。

 続投させてもらえるだけの信頼をまだ築けていなかったという側面ももちろん、工藤公康監督ら首脳陣が我慢しきれなかったという部分もあった。このイニング途中での降板をなくすことが、200イニングに近づく第1歩となるだろう。

 ソフトバンクで200イニング達成者は、2006年の斉藤和巳氏が201イニングを投げてから出てきていない。三浦大輔氏が2006年に達成したDeNAとともに、最も長期間、到達者が出ていない球団である。「200イニング」は先発投手にとって、1つの勲章だ。2018年、ソフトバンクの若き右腕はこの勲章を手にすることは出来るだろうか。

(Full-Count編集部)

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