【新社長インタビュー】〈リンタツ・山下良隆氏〉ステンレス需要深耕に注力 基盤整備を積極推進

――社長就任に当たっての抱負を。

 「若手社員が自ら成長に向けたビジョンを描いて提案し、積極的にチャレンジできる環境を作る。個人の考えに沿って階層を超えたチームを組織、課題に取り組める風土を築きたい。最近始めたテレビ会議を活用し、多くの社員の意見に耳を傾けたい」

――足元、今後のステンレス市場をどう見るか。

 「需要は自動車関連や業務用厨房、建材など軒並み底堅く、当面高い水準が継続するだろう。数多くの引き合いが寄せられる半面、メーカーの供給能力が不足し慢性的な品不足に陥り、解消のめどが立たないことを懸念している。海外材使用の提案も含めて、今後も需要家へ丁寧な説明を重ねながら安定供給に努めたい」

リンタツ・山下社長

――営業戦略を伺いたい。

 「国内既存分野の需要が縮小傾向にある以上、いたずらに新規顧客の獲得へ力を注ぐべきではないと考える。安定的に販売、加工数量の増加に向けカギとなるのは、ステンレス流通協会でも取り組みを推進する新規事業の開拓だ」

 「かつて相場が高騰した際、アルミなど他素材に切り替わった向け先が多くある。耐食性をはじめとする特性をPRし、再びステンレスを使用していただくようユーザーに働きかけたい。土木など拡大の余地が残る分野もあり、需要の裾野を広げることに注力する」

――業界再編、需給タイト化が進む中、メーカーとの関係も一段と重要となる。

 「独立系の強みを生かし、今後も当社の考え方を伝えながら共生する道を模索する。メーカーが減り、弾力的な仕入れが難しくなる中で安定供給を継続するためにも、さらなる協力関係の強化は不可欠と言える」

 「一方、ユーザーに選ばれる流通像を追求することはメーカーの利益にもつながる。問屋・加工商社機能を発揮しながら、需要家志向を第一に事業展開するとともに、我々が吸い上げた声をメーカーにフィードバックすることで製品開発、販路開拓に貢献したい」

――投資計画は。

 「半田ステンレス加工センターの加工設備更新などを検討しているが、まず老朽化が進む建屋、厚生施設のリニューアルに着手する。具体的には、近く半田工場の事務所棟を建て替えるほか、半田および子会社で食堂などの厚生施設を一新する」

――社内の基盤整備をどう進めるか。

 「従来以上に働きやすい職場、社風づくりを最優先で進めたい。無駄をなくすのは当然だが、頭ごなしに無理を押し付けず長いスパンで各自の販売、営業方針を進めてもらいたい。工場でもコスト意識を徹底しながら、安全・品質を第一に掲げたゆとり、確実性のある業務を励行させる。施設更新、制度など福利厚生も充実化することにより、社員のモチベーション向上にもつなげたい」

――18年9月期の業績見通しは。

 「仕入れ値上昇分の価格転嫁を着実に進めるため、安値での販売を極力避け売上高アップを追求しない方針は変えない。また厚生設備などへの投資もあり収益面も伸び悩みそうだが、売上高550億円、純利益13億円を必達目標としたい」(佐野 雄紀)

プロフィール

 入社後一貫して営業畑を歩み、主にヒモ付きユーザーへの販路開拓に注力。浜松支店の業容を大幅に拡大した。趣味はゴルフや社会派系を中心とする映画鑑賞。出張先などでの街歩きも好む。好きな言葉は「有言実行」。

 山下 良隆氏(やました・よしたか)85年リンタツ入社、05年取締役、12年専務、17年9月から現職。1962年7月23日生まれ、愛知県出身。

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