秘密戦の内実伝え 「登戸研究所」80年で企画展

 戦時中に秘密兵器開発を担った旧日本陸軍登戸研究所の前身「陸軍科学研究所登戸実験場」の開設から80年の節目に合わせた企画展「科学技術と民間人の戦争動員」が、明治大学平和教育登戸研究所資料館(川崎市多摩区東三田)で開かれている。資料館は「研究所が、泥沼化する戦争を水面下で支えた歴史を伝えたい」と来場を呼び掛けている。

 実験場は1937年12月、当時の生田村に開設。企画展では、当初は電波兵器の実験が主な役割だった施設が、日中戦争(1937〜45年)の拡大とともに秘密兵器や資材の開発拠点にまで役割が拡大した経緯や、携わった人物たちに焦点を当てた。

 日中戦争で首都・南京が陥落した37年12月、現地で陥落の様子を目撃した従軍兵士がしたためた自筆の「俊正正利従軍日誌」原本を、遺族から提供を受け初めて展示。日誌には攻略戦に参加した陸軍師団の入城の様子が記録され、「門内外に敵死者を多数目撃する」などと書かれている。

 国内の“戦勝ムード”を伝える「画報躍進之日本 南京陥落祝賀号」をはじめ、昭和天皇の陸軍施設視察、登戸研究所庶務担当者が残した陸軍科学研究所の日常風景を記録した貴重な写真も展示されている。

 登戸研究所が発明した高層気象観測用装置「ラジオゾンデ」が秘密特許として公にされなかったことを紹介。資料館は「公開されていれば、世界の気象による災害を減らすことができた。戦争は科学技術を発展させるのか、あらためて問いたい」という。

 企画展は来年3月31日まで。入場無料。今月9日午後1時半から、館長で同大文学部の山田朗教授が同大生田キャンパス中央校舎で講演会を開く。来年1月20日、2月24日、3月24日には山田教授が展示解説を行う。問い合わせは、同資料館電話044(934)7993。

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