【MLB】野手1位イチロー「凌駕困難な基準」 大谷上陸で沸く米誌、日本人1年目を格付け

マリナーズ在籍時のイチロー【写真:Getty Images】

投手の1位は野茂英雄氏、2位ダルビッシュ、3位松坂

 日本ハムからポスティングシステム(入札制度)を利用してメジャーに挑戦する大谷翔平投手。MLBのほぼ全球団が参戦した争奪戦の末、エンゼルスを新天地に選んだ大谷は1年目にどんな成績を残すのかは、アメリカでも大きな注目を集めている。そんな中で、米スポーツ専門誌「スポーツ・イラストレイテッド」電子版では大谷の新天地決定を受け「MLBに移籍してきた日本人選手の最高のルーキーシーズンを格付けする」と題した特集を行なっている。

 1964、65年シーズンにジャイアンツでプレーした村上雅則投手以来、100人以上の日本人選手が海を渡ってきた。その中でルーキーシーズンに最も輝いた日本人選手を「スポーツ・イラストレイテッド」誌は、現在最もメジャーで重要視される「WAR」という指標も参考にしながら、ランク付けしている。

「WAR」は、打撃、守備、走塁、投球を総合的に評価して選手の貢献度を表す指標。あらゆる選手を同じ土俵で比較することができる。評価は同じ出場機会分を最小のコストで代替可能な選手(リプレイスメント・レベルの選手)が出場する場合に比べてどれだけチームの勝利数を増やしたかによって計算される。

 投手部門でトップにランク付けされたのは、1995年にドジャースに移籍した野茂英雄氏だ。村上氏以来の日本人メジャーリーガーとなった当時25歳の右腕はトルネード旋風を巻き起こした。同誌は文中で「わずか200万ドルの契約金でLAとサインした25歳の右腕は独特なコークスクリューワインドアップ投法と厄介なフォークボールで4月に堅実な活躍を見せた。そこから13試合で防御率1・31と119奪三振を記録した」と紹介している。野茂は13勝6敗、防御率2.54をマーク。236三振はナ・リーグ最多奪三振に輝き、WARは4.7を記録した。チームも1988年以来のナ・リーグ西地区優勝に貢献した。

投手2位はダルビッシュ、3位に松坂

 野茂氏に続く、2位にランキングされたのは、2012年のダルビッシュ有投手(当時レンジャーズ)。日本ハムからポスティングシステムを利用してレンジャーズに移籍した右腕については「日本ハムから5170万ドルの譲渡金と、年俸総額5600万ドルの6年契約にサインしてレンジャーズへと加入した。前半戦は打者有利なレンジャーズのスタジアムで苦難に直面したが、ダルビッシュは印象的なシーズンに一変させた」とレポートしている。ダルビッシュは1年目に16勝9敗、防御率3.90、リーグ5位の221奪三振を記録。オールスターにも選出され、WARは3.9だった。

 3位に入ったのは、2007年にレッドソックスに加入した松坂大輔投手。西武からポスティングシステムを利用して、譲渡金5110万ドル、年俸総額5200万ドルの6年契約で移籍。記事内では「1年目は201奪三振で15勝12敗、防御率4・40という成績で、WARは4.1。ア・リーグ新人王投票では4位となり、ワールドシリーズ優勝に貢献した」と紹介している。また、4位は2014年のヤンキース・田中将大投手、5位は2006年のドジャース・斎藤隆投手が位置づけられている。

 野手でトップにランクされたのは、今季限りでマーリンズからフリーエージェントになったイチロー外野手だ。2001年に、ポスティングシステムを利用して、オリックスからマリナーズに移籍。いきなり、いずれもリーグトップとなる打率.350、242安打、56盗塁を記録し、1975年のフレッド・リン(レッドソックス)以来、史上2人目の新人王とMVP同時受賞を果たした。

イチローは「凌駕するのが困難な基準を作った」

 同誌は「過去3シーズンにランディ・ジョンソン、ケン・グリフィーJr.、アレックス・ロドリゲスを失っていたチームに加わり、スピードスター・スズキはシアトルの次なるスーパースターとなった」と称賛。さらには「いかなる日本人ルーキーにとって、凌駕するのが困難な基準を作った」と評している。

 野手の2位は2005年にホワイトソックスに加入した井口資仁内野手。ダイエーの日本一に貢献した2004年オフに自由契約となり、ホワイトソックスと2年総額490万ドルで契約した。1年目は打率.278、15本塁打、15盗塁でWARは2.8。文中では「2番二塁として、とても堅実なルーキーシーズンの活躍だった。チームの88年ぶりのワールドシリーズ優勝に貢献し、これは日本人野手として初の偉業であった」と紹介している。

 井口に続く3位は、2003年に巨人からヤンキースに加入した松井秀喜外野手。ヤンキースと3年2100万ドルの契約を結び、1年目に106打点と活躍した。4位は2012年の青木宣親外野手(ブルワーズ)。打率.288、10本塁打、30盗塁、WAR3.4という成績で、ナ・リーグ新人王投票で5位に選出。ちなみに記事中では、この年の新人王がナショナルズのブライス・ハーパー外野手だったことも紹介。そして、5位は2006年にマリナーズに移籍した城島健司捕手となっている。

 エンゼルスでは投打での活躍が期待されている大谷。二刀流のスーパースターは偉大な先輩たちに迫り、さらにはそれを凌駕するような衝撃のルーキーシーズンを過ごすことができるだろうか。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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