痛みで噛めない、顔が腫れた…「即、歯科受診すべき」症状とは

歯が痛くて噛めない、歯茎が腫れた、被せ物が取れた、顔まで腫れた……歯のトラブルは様々。我慢できる程度の歯の痛みや腫れではつい先延ばしにしがちですが、すぐに歯科を受診すべき症状もあります。治療コストと時間を最小限に抑えるために大切な、すぐに歯科に行くべき5つの歯の症状を歯科医が解説します

自然治癒を期待してはいけないすぐ歯科医に行くべき歯の症状

歯が痛む、痛みで噛めない、歯茎が腫れた、被せ物が取れた、物がはさまる、冷たいものがしみる、顔まで腫れてしまった等々、歯のトラブルは様々です。我慢できる程度の症状だとつい先延ばしにしがちですが、早めに歯科を受診しないと悪化し、結果的に治療のコストも時間も多くかかってしまう症状があります。歯科医として臨床の場で見ることが多い歯の症状をもとに、今すぐ歯科を受診していただきたい5つの症状と、それぞれの受診が大切な理由について詳しく解説します。

歯が痛くて噛めない場合は我慢せずにすぐ歯科へ

歯は炎症を起こすと、ごくわずかに浮き上がろうとする習性があります。噛んで痛いというのは、浮き上がろうとしている歯を押し込むような力を加えてしまうためです。

より強い炎症が起きて浮き上がる量が大きくなると、明らかに歯が一段浮き上がってしまいます。こうなると口を閉じて全部の歯を噛み合わせる前に強い痛みが起こるようになり、口を閉じておくことも苦痛になります。痛くて噛めない状態を放置すると徐々に悪化していくことがあるので、早めに受診をした方がよいでしょう。

歯茎から顔まで腫れた場合もすぐ歯科へ

歯が原因で化膿すると、顔まで腫れてしまうことがあります。しかしいきなり腫れることは少なく、多くの場合、少し腫れてもしばらくすると自然に収まることを繰り返すので、違和感があるうちに治療してしまうことが大切です。

一度腫れが許容範囲を超えると、腫れの内部に膿が溜まり始めます。こうなると応急処置として歯ぐきを切開して膿を出す必要があります。膿の溜まるスピードが早い場合、自然治癒するどころか、膿がどこかから出るまで腫れ続けるため、朝は少しの腫れだったにも関わらず、夕方になるとパンパンなって口が開けにくくなるほど腫れてしまうことがあるのです。この症状が悪化すると入院治療が必要になることもあるので注意が必要です。すぐに受診しましょう。

歯に物がはさまる場合も放置せずに歯科へ

食事の後に歯に物がはさまるのが気になる人も、放置しがちですが注意が必要。物がはさまるたびにすぐに確実に取り除く習慣がない限り、いつの間にかその状態に慣れてしまい、取り除かないままの状態になることが少なくありません。すると歯と歯の間から虫歯が急速に進行して、いわゆるトンネル虫歯が形成されます。その穴にさらに食べカスや虫歯菌が入り込むことで、虫歯の進行が加速してしまうのです。

はさまる量が多くなると歯ブラシや歯間ブラシではしっかり取れないようになってしまいます。実際歯科医院で歯の治療器具を使って取り除くと、どれほど圧縮されて詰まっていたのかと驚くような大量の食べカスが、次から次へと出てくることもしばしばです。

繊維状の食べカスが大量にはさまると、歯ぐきの奥の方に次から次へと押し込まれて、虫歯と歯周病が急激に進行するため、そのままでは歯の寿命を極端に縮めることとなり、ひどくなると抜歯になることもあります。歯に物が頻繁にはさまる人は、放置せず歯科を受診するようにしましょう。

歯がズキズキと痛む場合も自然治癒を期待せずに歯科へ

虫歯には、水がしみるなどの初期症状があります。これは歯の内部にある象牙質という部分に虫歯が進行することで、水などの刺激が歯の内部の神経に伝わるためです。この状態で虫歯の治療を行うことができれば、歯の神経を取らず、1~2回の治療で治すことができます。

しかし放置すると虫歯がさらに進行して歯の神経が直接細菌に触れるようになり、痛みがさらに強く、ズキズキとした痛みになることがあります。この状態から歯の治療を行っても内部の神経を残せないことが多く、治療期間も長引いてしまいます。

虫歯以外にも、歯の神経を抜いてしばらくしてからも同様の痛みが起こることがあります。歯の内部に残った汚れが原因で、歯の根の先端部分の骨に膿が溜まり、骨に囲まれた空洞に膿の圧力が高くかかることがあるためで、この場合もズキズキする痛みが生じることがあります。この場合は詰め物をすぐに取り外し、歯の内部から膿を出す治療が必要になります。

歯の詰め物・被せ物の金属が取れたら痛みがなくても歯科へ

歯の詰め物・被せ物である金属が取れてしまうことは、臨床ではよく見かけるケースで決して珍しいものではありません。しかし金属が取れているにも関わらず、痛みがないからと放置してしまうのは非常に危険。あとで大きな問題になることも少なくありません。

金属が取れた状態で放置すると、歯はできた隙間に移動することで、隙間を埋めようとします。この場合、再治療の際に余分に歯を削らなければならなくなります。さらに外側の硬いエナメル質より柔らかくて虫歯の進行が早い内部の象牙質が露出したままになることが多いため、虫歯の進行が進みやすく、ひどくなると神経を取らなければならない状態になっていたり、抜歯に至ってしまったりすることがあるのです。

歯に関しても、いきなり我慢できないような大きなトラブルが襲ってくることは少なく、ちょっとしたトラブルの方が多いものです。通常とは違う小さなシグナルに気づいた段階で、すぐに処置することが、結局一番コストや時間の節約につながります。放置せず、効率的に適切に対処していきましょう。

(文:丸山 和弘(歯科医))

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