【トップインタビュー 中山鋼業・井手迫利文社長】33億円投じ次世代型省エネ設備 加工部門、第2の柱に成長

――下期の業績見通しは。

 「上期(17年4~9月期)は、鉄スクラップ価格上昇のアゲンストの風を受けながらも1億7千万円の黒字を計上できた。量を追わず販価優先の成果だ。売上高も80億円で増収だったが、原料を含めた製造コストアップの影響で大幅な減益だった。特にスクラップは期初から期末にかけてトン6500円上昇。9月末にはトン3万円の大台に乗った。また電力、副資材などのコスト高もあって販価引き上げに取り組んだが、コストアップ分の値上げが達成できなかった。通期黒字確保に向けて販価引き上げは最重要課題だ」

 「下期も、10月以降、スクラップや副原料、電極、耐火物など値上がりしている。このためさらなるコストアップが避けられず、再生産可能な製品販価6万5千円以上への引き上げが達成できなければ下期黒字は見えてこない。営業部隊には『契約残もあり、慌てることはない。不退転の強い気持ちで販価引き上げに取り組め』と指示している」

中山鋼業・井手迫社長

――当面の市場環境の見通しは。

 「土木関係の引き合いが上期から継続している。北陸新幹線、新名神高速道、四国や和歌山の有料道路案件や、大阪では梅田北ヤード開発案件なども動きだしている。問題は建築案件が低迷していることだ。関西のRC建築関係の回復は見通しにくい。不足しているホテル建設や商業ビルの建替え・再開発案件の成案実行に期待しているが現状の継続という覚悟で経営にあたる」

――設備投資。この数年、省エネ投資を実施してきたが。

 「14年から16年にかけて7件の省エネ投資(総額4億円以上)を実施。その効果は今年のエネルギーコスト削減で確実に成果を上げている」

 「今期は省エネ投資の総仕上げとして『電気炉次世代型省エネ設備(エコアークライト)』の導入に向けた事前工事を5月から着手した。12月には電気炉を約半月休止して事前工事(電気炉付帯設備の移設新設)を完了させ、来年夏に電気炉を1カ月半休止して本工事を実施。9月1日ホットランの計画だ。12月および来年夏の製鋼工場休止期間は、スクラップの荷止めも実施するが、圧延ラインは稼働させる。製品と鋼片の備蓄も計画通り進めており、お客様への製品供給は通常通り実施できる」

 「総額33億円(補助金活用)の社運を賭けた投資となるが、生き残るためには避けて通れない。非常に楽しみにしている。全社一丸となって完成させていく」

――加工部門や新商品開発も進んでいる。

 「今年5月に、新『鉄筋加工工場』(1700平方メートル、投資額4億円)が完成し、加工設備の移設・新設も完了させ6月から自動曲げ、自動切断、高周波端部定着機などの加工設備がフル稼働している。月間加工量も1年前は月平均800トン程度だったが、現在は、土木関係の順調な受注・出荷もあり、月1600トンまで増加している。収益も黒字運営できており上期業績に貢献でき、タイムリーな経営判断だった。第二の経営の柱に成長させていく」

 「また新メニューとして、10月に『SD590B』鋼種の大臣認定を取得した。土木分野で活用できる。道路公団の指定であるネジ節鉄筋継手の『SA級』への切替取得も上期でほぼ完了。今後は『端部定着板』の土木用途の大臣認定を早期に取得する。まだまだやらなくてはならないことが多いが、人的資源不足もあり地道にやっていく」

――電炉鉄筋メーカーは引き続き厳しい情勢だが、中長期的な展望は。

 「当社は現在、会社創立67年目になったが、『100年企業』を目指していくには、コスト競争力や品質競争力はもちろんだが、人材確保と育成を今まで以上に推進する必要性を感じている。女性採用拡大や加工部門での外国人研修生の採用も検討していきたい。同時に設備の自動化による省人化を再度進める必要がある。また2021年の年金支給年齢の引き上げを考慮した65歳への労働政策変更も検討開始時期になってきた」

 「当社は2000年に、鉄筋棒鋼の構造改革モデルとして、旧国光製鋼と合同製鉄・大阪の棒鋼工場を休止し、中山鋼業へ集約して大阪で唯一のベースサイズ鉄筋メーカーを誕生させた。その構造改革作業を担ってきた先人たちの苦労と熱き思いを忘れることなく、攻めの事業活動を行っていきたい」(小林 利雄)

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