【拡大するベトナム建材市場 JFEグループの事業戦略(2)】〈鉄鋼建材商社JYスチール・プロセッシング・ベトナム・奥山秀樹社長に聞く〉商社機能発揮、収益底上げ サプライチェーン把握し需要捕捉

――需要環境の認識は。

 「ベトナムの建築物はRC造が主流で鉄筋の需要は旺盛だ。ベトナム鉄鋼協会の統計によると2016暦年の需要規模は800万トン超、17暦年も第3四半期までで前年同期比10%以上の伸びを示している。今年10月に出荷量の落ち込みが見られたが11月には回復しており、今期は900万トンを超えそうだ。地場メーカーの設備投資も再び盛り上がりつつあり、まだ伸びる国と再認識している」

――追い風の中でどのような事業展開を。

JYスチール・プロセッシング・ベトナム・奥山社長

 「親会社のJFE商事鉄鋼建材を体現し日本と同じ建材商売をしたい。ロスの抑制や厳格な原価管理などの特長に加え、建材の高いノウハウを保有しJFEグループの一員でもあるという強みを武器に、顧客目線で課題を解決していきたい」

 「鉄筋の加工・販売が事業主体だがこれにかかわらずJFEグループ全体の収益を底上げしていくことがミッションだと思っている。鉄筋の加工・販売を通じて顧客や価格動向などの情報をキャッチしていきたい。ベトナムのサプライチェーンをを把握して、ビジネスに繋がる土台を築いていきたい。商社機能を発揮しグループの製品を含めたトータルで営業していく」

――足元の鉄筋加工量は。

 「月産2千トンをコンスタントに行うことが最終的な目標だが今は道半ばにある。18、19年はベトナム北部の需要が増えるという話も多く、できるだけ需要を捕捉して数字を伸ばしたい。日系工場案件以外の大型案件の受注にも注力していきたい」

――JFEグループとの連携はどのように。

 「主に国内プロジェクト情報や顧客情報を共有している。商社としての与信や金融機能をベトナムで強化してグループの一助となればと思っている。また、アグリメコ&JFEスチールプロダクツとは共同営業を行うことで鉄骨案件にもRC案件にも応えられる高い相乗効果を発揮できそうだ。協力して需要を捕捉したい」

――昨年9月の会社設立から見えてきた課題は。

 「ベトナムならではの建設事情や商売の特性が理解できてきた。日本の建設業界の考え方をそのまま移管してすぐ活用できるわけではない。ローカライズしながらお客様に協力させていただく事を念頭に置きつつ、社員一人ひとりの教育・レベルアップを図って、評価される会社にしていきたい。また、当社は鉄筋を加工してお客様に納入するところまでだが、派生する潜在ニーズに取り組めるかどうかをこれから検証していく」

――中長期的な展望を。

 「長い目で見ればローカルの顧客を増やして安定収益を築くことが大切。販路拡大を図りたい。ベトナム国内で収益を確立することが大前提となるが、周辺諸国をどのように考えていくかが将来的には重要となる。ミャンマーなど東南アジア周辺諸国は日本よりも距離的に近く、顧客により近い位置にいる。JFE商事初の海外建材拠点として人脈を築きながらどの国へ展開してもお声がけいただけるようにしていきたい。当社個社というよりもJ商グループ全体という発想で、頭を柔らかく新しいこと、地域にトライできるようにしていく」(村上 倫)

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