【拡大するベトナム建材市場・JFEグループの事業戦略(3)】〈重仮設リース「ジェコスベトナム」酒井宣之社長に聞く〉認知度向上、建築需要も捕捉 ハノイにも拠点新設検討

――設立から約1年となりますが、これまでの成果は。

 「ジェコスとして初の海外進出でゼロからのスタートだったが、JFEスチールの支援を受けながら取り組んできた。ベトナム進出の契機となったホーチミン地下鉄1号線建設工事は今も継続している。本件はJFEスチールのベトナム鋼管杭合弁、Jスパイラルスチールパイプとジェコスが連携して仮設用鋼材を成約し、当社が設計・エンジニアリングおよび加工の監修を行った。これに続いてシールドマシンの反力壁や作業床など約100トンも受注したが、これはジェコスベトナムが窓口となって受注し、Jスパイラルで加工するスキームとなっている」

 「事業を進める中で、日系ゼネコンなど顧客からの認知度も徐々に向上しており、先行して進出している日本の重仮設業社がある中で、当社も見積もりの引き合いをいただけるようになってきた。建築分野でもイオンモールホーチミン1号店増築工事で鋼矢板1千トン弱のリースを受注している。従来、ジェコスベトナムの設立は大規模に在庫して賃貸する形ではなく、ODAの都市土木案件が狙いだった。しかし、ODA案件は進みが遅い面もあり、ハノイの地下鉄2号線なども入札が1年近く伸びている。こうした背景から、本来都市土木案件の後と想定していた建築分野についても、日系の案件を中心に取り組みを開始している」

ジェコスベトナム・酒井社長

――ヤードを持たずにリース業を展開できるのでしょうか。

 「山留材や鋼矢板は市中からの調達が可能で、基本的にはサブリースが中心だが、必要最小限の資材はJFEグループ各社が保有しているヤードを活用するなどして保有している。設計などのサービス機能を生かし、実績を積み重ねて信頼を得ることで、施工管理を含め計画段階からゼネコンへ協力していきたい」

 「また、加工についてはJスパイラルのほかJFEプラントエンジ、アグリメコ&JFEスチールプロダクツとも連携していきたい。当社もグループ関連の工事案件があれば協力していく。現在、ホーチミンを中心に事業を行っているが、ベトナム政府はハノイの開発に注力している。ハノイの地下鉄が具体化すればハノイでも拠点の確保を検討し、北部での建築案件にも対応していく」

――ジェコスの長期ビジョンでは海外売上比率の拡大を謳(うた)っており、その橋頭堡としての役割も期待されます。

 「ミャンマーなど周辺国も含めて市場調査を進めるとともに、仮設以外の仕事でも可能性を模索していく。アセアンへはベトナムを拠点として事業展開を進めていく考えだ。現在、人員は日本人2人、ナショナルスタッフ2人だが、状況に応じて増員も検討している。ナショナルスタッフの育成も重要で、日本での研修も適宜行っていきたい」

 「インドネシアやミャンマーなどの日本のODA案件で日系ゼネコンが関わるプロジェクトについては積極的に協力していく。一方で、与信や材料などの問題もあり、すぐには難しいと思っているが、ベトナムにおける日系以外のローカル案件に対応していくかは検討課題の一つだ」(村上 倫)

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