【UACJ製箔の成長戦略】〈新堀勝康社長に聞く〉次期中計で設備の自動化推進 国内3工場、最適生産体制、9割完了

 UACJグループで箔事業を手掛けるUACJ製箔は、中期計画最終年度を迎えて目標の達成と次期中計策定に向けた取り組みを強めている。上期の実績と下期や次期の見通しを新堀勝康社長に聞いた。(遊佐 鉄平)

――下期入りしましたが、アルミ箔の足元の需要環境は。

 「上期はリチウムイオン電池(LiB)材料の伸びが目立った。国内需要は、車載向けよりもスマートフォン向けなど民生機器関連が中心だが、これらが好調だった。加えて欧州中心に広がるいわゆるパワーツールの電動化が出荷増に貢献した。EV向けは来年後半くらいから徐々に増えていくだろう」

UACJ製箔・新堀社長

 「コンデンサーは産業機器向けが好調を維持しており、下期も車載部品関連に期待している。医薬品用PTP箔は、ジェネリック医薬品の拡大が一服感を示しており今年は大きく伸びていない。ただし20年までの期間でみれば期待できる。このほか、加熱式タバコにアルミ箔が利用されるとの観測があり、非常に期待している」

――今期目標に対する進ちょく状況は。

 「国内販売は今期も前年微増の年産3万トン超を目指している。上期は、一時出荷が停滞した時期もあったが、LiB関係の出荷が堅調なこともあり、ほぼ計画通り。足元も今のところは堅調を維持している」

――国内で進めていた最適生産体制の取り組みは。

 「それぞれ持ち味がある3拠点の能力を生かし切る形を目指してきたが、それも9割方完了した。圧延でいえば、野木工場(栃木県)のバックアップを伊勢崎工場(群馬県)が担う格好になっている。伊勢崎工場では今夏、電池材生産が需要の増加により毎月生産記録を更新するような状況で2工場とも繁忙。塗装などの加工を主力とする滋賀工場(滋賀県)も圧延の生産が拡大している」

 「一方で、加工の分野はまだ改善の余地がある。PTP箔は生産性の視点では計画通りの対応ができたが、今後は東西で同じ対応ができるようにしていく。食料品向けは、製品によって使える設備に制約があるため簡単に集約はできないが、子会社の日金・埼玉工場(埼玉県)の設備も活用して効率化をさらに進めたい」

――マレーシア子会社の現状は。

 「東南アジアの箔市場は中国からの安価な箔の流入が止まっておらず、中東も含めて加工賃は3年前の半分程度まで落ち込んでいる。環境は非常に厳しいが、長く安定して取引できる顧客を開拓していきたい」

 「また7月からはLiB材の生産が始まった。米国や一部で中国の顧客からも引き合いがあり、来年からは本格的に量産化したい。中長期的には連続鋳造ラインの機能を高め、品質の向上とコスト削減に取り組んでいく」

――次期中期計画でテーマとなることは。

 「国内拠点は野木工場も伊勢崎工場も稼働から40年が経過し、制御系やモーターの更新が必要になる時期に入ってきた。これらの更新に合わせて設備の自動化を進め、品質向上と生産性を同時に高める施策を実施する。また人材確保の面では女性登用を積極化するためにも、〝女性目線〟の職場づくりにも力を入れる。海外では、マレーシア拠点の積極的な活用や中国の乳源東陽光優艾希杰精箔との連携を強化していく」

 「開発力の強化も重要なテーマ。これからも期待されるLiB分野では、正極材料だけでなくパウチタイプの外装材の開発が必要だろう。加えて今年4月に開発営業室という、特に加工の分野で新しい需要を開拓する組織を立ち上げた。これまで取り込めなかった需要を研究部門と一緒になって開拓し始めている」

――品質管理体制は。

 「4月に品質保証本部を設け、7月に品質保証を専門に担当する常務を据えた。体制は整備したが、管理面は人手に頼っている部分が大きいので、順次自動化を進めていく。また、製品仕様を適切なものに変えていくことも進める。統合して約4年になるが、旧2社の品質保証基準がそれぞれ継続している部分がまだある。顧客と協議しながらあるべき姿に統合していく」

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