1年で3度の行政処分を受けたジャパンライフ、被害者弁護団は刑事告訴も検討

 11月17日、消費者庁から迷惑解除妨害など特定商取引法違反で一部取引の停止処分を受けたジャパンライフ(株)(TSR企業コード:291624898、千代田区、山口ひろみ社長)。
 ジャパンライフは2016年12月、2017年3月、そして今回と1年間で3回の行政処分を受けており異例な事態となっている。
 消費者庁による公認会計士の監査で2017年3月期は根拠のない仕訳を取り消すと338億7,674万円の債務超過も指摘されている。
 ジャパンライフは、家庭用永久磁石磁気治療器や寝具、化粧品などを主に高齢者に販売していた。2017年7月、東京商工リサーチ(TSR)がジャパンライフへ取材すると、2017年3月期の売上高を235億725万円、純資産40億313万円、総資産は174億9,694万円と答えていた。しかし、その後のTSRの取材には、「取材はすべて受け付けていない」とコメント。商品内容も「担当が不在」と説明を拒んだ。
 立て続けに行政処分を受けたジャパンライフの現状を追った。

ジャパンライフの本社

ジャパンライフの本社

積極的な営業で事業拡大

 ジャパンライフの山口隆祥・代表取締役会長は、かつて健康食品販売のジェッカーフランチャイズチェーン(株)(TSR企業コード:290577918)を経営していた。1975年5月、特殊販売に関する問題で山口隆祥氏は国会に参考人として招致され、それから1年後の1976年11月に同社は銀行取引停止処分を受け、事実上倒産した。
 ジャパンライフは、その1年半前の1975年3月に設立された。1985年2月期には売上高が1,509億円と急成長したが、同時期に「マルチまがい商法」として社会問題になった「豊田商事」事件が発生。その余波を受けて業績は大幅に落ち込んだ。その後、会長の娘の山口ひろみ氏が2007年に社長に就任し、2017年3月期(1992年より3月決算)の売上高は235億725万円まで回復した。

ジャパンライフ売上・利益推移

100万円を超える高額な商品と複雑な取引

 ジャパンライフの社内資料には、「全国80店舗、正社員800名、接客アシスタント2,000名、アンテナショップ5,300カ所、地域センター1,000カ所」と記載し、巨大組織を謳っている。
 チラシに掲載された磁気ベストやバンドなど装着タイプの磁気医療器の小売価格は、100万円から600万円などと高額だ。
 手元にTSRが独自に入手した2015年11月末の「大口レンタル事業者名簿」がある。
 そこには「相続税対策が終わった皆様」と題し、氏名の横に「レンタル事業合計金額」が並ぶ。1位は12億4,780万円、2位が9億2,109万円、3位が8億7,200万円。億単位の金額の序列と獲得を煽るように店舗名が記載されている。
 ジャパンライフの営業は、消費者の自宅を訪ね契約する訪問販売だった。高額な磁気治療器を一般顧客に販売し、その商品はジャパンライフが3カ月以上の期間で預かる。預けた商品は第三者にレンタルし、得られるレンタル料を購入者に渡す預託等取引契約を締結する。会員になると商品販売を斡旋して資格別ボーナスを得られる連鎖販売取引もあった。
 業績が回復途上の2016年12月16日、消費者庁から預託法及び特定商取引法違反で2017年3月16日までの3カ月間、預託等取引、訪問販売、連鎖販売に関する一部取引の停止処分を受けた。
2017年3月16日にも再び消費者庁から預託法及び特定商取引法違反の処分を受けた。処分内容は、2017年12月16日までの6カ月間の一部取引の停止だ。
 消費者庁の調査では、2015年9月末で預託を受けていた商品は2万2,441個。だが、実際にレンタルユーザーに賃貸していた商品はわずか2,749個。その差の1万9,692個は本来保管されどこかにあるべきだが、在庫は95個しかなかった。消費者庁は大幅に不足する在庫などについても指摘した。
 ジャパンライフは2015年10月1日から通信販売を除き、すべての商品の訪問販売を止め、店舗での直接販売に移行した。また、消費者に商品を販売後、ジャパンライフに預けて第三者にレンタルする預託等取引も止めた。
 代わって、商品を販売し、購入者がその商品を拡販や宣伝して得られる利益(業務提供利益:販売価格の6%)をジャパンライフが渡すという業務提供誘引販売を始めた。訪問販売や預託取引を止め、業務停止処分の影響を抑える対策とした。
 TSRは2017年4月度の店舗別売上管理表を入手した。そこには全国を北海道から熊本まで25エリアに分け、各地方、各エリア、各店毎の目標金額が記載されている。目標金額の最低は青森店などの1,500万円。最高は北信越・岐阜地方の4億6,500万円で、全体の目標額は25億9,500万円とある。注目すべきは目標額に対し、売上結果は35億5,849万円と大幅に上回っていることだ。2回の消費者庁からの処分をものともせず跳ね返している。

3回目の処分、債務超過の指摘

 ところが、11月17日に消費者庁は業務提供誘引販売に係る新規加入や申込受付、契約締結を1年間(2018年11月17日まで)停止する命令を出した。停止期間中は業務提供誘引販売ができない。新たな営業手法に早くもストップがかかった格好だ。
 違反内容は、消費者にエステやマッサージなどを告げるだけで、勧誘目的などを明らかにしない勧誘目的等不明示。公認会計士による監査で、2017年3月期で約338億円の債務超過だったことを業務提供誘引販売した顧客に故意に事実を告げない行為、などを指している。
 入手した資料では、ジャパンライフの家庭用治療機器と家庭用磁気治療器の預託等取引の対象商品は、2017年3月末で契約残高が1,843億3,855万円、実地棚卸高は721億794万円となっている。
 ジャパンライフがTSRに公表した決算書の資産合計は174億9,694万円で、棚卸額に遠く及ばない。公認会計士が作成した「独立業務実施者の合意された手続実施結果報告書」によると、一般的な監査ではないという前提で2017年3月期の純資産額は338億7,674万円の債務超過で、資産合計は2,066億7,382万円、負債合計は2,405億5,057万円だった。

ジャパンライフの比較貸借対照表

 ジャパンライフは今年9月、公認会計士による外部監査の結果、「(ジャパンライフから)十分かつ適正な監査証拠を入手できなかったとの理由で意見不表明となった」ことを顧客向けに公表した。
消費者庁によると、2015年4月1日から2017年11月13日までジャパンライフについて消費生活センターに寄せられた相談件数は合計497件。すでにジャパンライフへ支払った金額の平均は1,850万円、最高額は5億円に及ぶ。相談者は、70歳以上が73%、女性が74%、無職が59%だという。ここにジャパンライフのターゲットが透けて見える。

新たな販売方法の開始

 四面楚歌に陥ったかにみえたジャパンライフだが、処分を見越すかのように動きは素早かった。業務提供誘引販売の処分を受ける3日前の11月14日、新たに11月1日に遡り磁気治療器のリース債権販売をスタートした。
 リース債権総額は約129億5,000万円と限定。例えば、100万円のリース債権を消費者が70万円で購入すると、5年間にわたり月額5,000円×60回の30万円の債権収入を得られる。年利8.57%の高率だ。5年後には債権を70万円でジャパンライフが買い取るシステムだ。
 11月から各店舗で販売しているようで、12月7日にジャパンライフのある店舗の状況を確認すると、顧客とみられる多くの高齢者が出入りし、若いスタッフが見送りする様子が何度も見受けられた。

ジャパンライフの横浜店

ジャパンライフの横浜店

被害対策弁護団が刑事告訴も検討

 2017年9月、中部地区の弁護士がジャパンライフ被害対策中部弁護団を組織した。弁護団の事務局長は永田有香弁護士(深津法律事務所内、電話:0566-73-0770)が務めている。永田弁護士は「ジャパンライフの被害の回復及び防止を目的としている。中部だけでなく全国の被害者から相談を受け付け、場合によっては連携している各地の弁護士を紹介することもできる」と話す。また、「刑事告発も検討している」という。
 特定適格消費団体の特定非営利活動法人消費者機構日本もジャパンライフに関する情報を集めている。消費者から被害情報を収集し、消費者団体訴訟制度の差止請求や被害回復による対応を検討しているという。情報提供はホームページや電話などで受け付けている。


 2017年12月16日に預託法及び特定商取引法違反の9カ月間の処分が終了する。消費者庁に新たな処分の意向を確認すると、「個別案件には回答しない」とのことだった。
 コンプライアンス(法令)遵守が重視される時代に1年間に3度の行政処分。決算の仕分けに関する多額の相違。業績と別に、企業として、経営者として、モラルを問われている。財務内容は健全か。契約時の説明は十分か。ジャパンライフの真摯な姿勢が問われている。

 (東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2017年12月14日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

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