疲労回復のための食事のコツ?疲れたときに食べるといいもの!?

疲労が溜まってしまう仕組みと、疲労を予防・回復しやすくする食事のポイントについて、栄養学的な面から管理栄養士が具体的に解説します。

いつまで経っても疲れが取れない……疲労が蓄積する理由

毎日忙しくしている現代は、慢性的な疲れを感じやすい環境にあります。眠っているはずなのに疲れが取れない、朝起きた瞬間から疲れている、そんな方も少なくないでしょう。

こういった疲れの原因として挙げられるのは、下記のような内容です。

・過労や睡眠不足

・不規則な生活

・精神的なストレス

・栄養のバランスが悪い

・インフルエンザ等の疾患で体調が悪い

インフルエンザ等の疾患による体調不良は、その疾患を治すことで疲労感が回復しますが、それ以外は生活習慣自体を改善する必要があり、なかなか一筋縄ではいきません。

しかし、きちんと改善に向けて努力するためには、なぜ食事が疲労回復に繋がるのか、腹落ちする理由が欲しいものです。疲れが生じるメカニズム、疲労回復に必要な栄養素や疲労解消法について、管理栄養士が詳しく解説します。

適切な食事管理が大切! 脂肪の蓄積は疲労が取れない原因に

ヒトは食べたものを燃焼させることで、生きるためのエネルギーを作り出しています。食事をすると身体の中ではさまざまな生理的反応が起こりますが、その際の触媒になるのが「ビタミンやミネラル」。これらが不足すると、反応が先へ進めないため、エネルギー源は蓄積しやすい脂肪の形に変換されてストックされます。

身体は脂肪を必要なものとしてストックしているはずですが、一方で、溜め込みすぎると「腫れている」と勘違いするせいか、通常より多くの「炎症物質」を出してしまうのです。この炎症物質が蓄積すると、全身倦怠感・微熱・筋肉痛などの身体症状の他、抑鬱・思考力低下などの精神症状が出るとされています。

そのため、疲労を蓄積しないためには休息と併せて、食事管理に留意しなければなりません。必要以上の脂肪細胞を体内に溜め込み過ぎないようにすることが不可欠です。

疲労回復には定食を!「ビタミンC」や「アミノ酸」が効果的

耳タコかもしれませんが、まずはなんといっても規則正しい食事が基本。1日1食だと食べすぎが防げるという考えの方もいるようですが、ビタミンやミネラルなどの必要成分が不足しやすくなります。1回ごとの食事量を減らして1日3食、時間を決めて食べることが何よりも大切です。

食事の内容は、栄養のバランスを考えると「定食スタイル」が最も適しています。「定食スタイル」とはご飯やパン、麺などの主食、肉、魚、卵、豆腐などの主菜、副菜の3種類が揃っていること。どれか1つでも欠けてはいけません。

よく「野菜中心に食べています」と言う方がいらっしゃいますが、野菜ばかりでも栄養のバランスは崩れます。野菜を意識して多めに食べることはよいことですが、ご飯や魚をおろそかにしてはいけません。

栄養成分としては「ビタミンC」や「アミノ酸(とくに分岐鎖アミノ酸やイミダゾールジペプチド)」などが疲労回復に役立つといわれています。

ビタミンCを多く含む果物や野菜を多めに食べることや、適量の良質のアミノ酸を含む肉・魚・卵などを毎日食べることが大切です。ビタミンCを特に多く含む果物は柑橘類、また野菜であればピーマン・キャベツ・ブロッコリー・カリフラワーなどに多く含まれています。

あまりオススメはしませんが、一時的にでも疲労を解消したい場合には「糖分補給」も有効です。特に、甘味の強い糖類に即効性があります。具体的には、チョコレートやクッキー、まんじゅうなどが効果的です。

しかし、こうした甘いものはあくまで「カンフル剤」です。あまり多用してしまうと、クセになってしまい肥満を助長するので気をつけてください。

肉体疲労? 精神疲労? それぞれに見合った疲労解消法

疲労には大きく分けて2種類あります。激しい運動を行った後の肉体疲労と精神的な疲れによる疲労です。食事でこのどちらの疲労もある程度カバーできるのですが、それだけでは限界もあります。疲労の種類に見合った解消方法を行うことが大切です。

肉体疲労の場合は、何よりも身体を休めることが大切です。この場合、横になってTVを観る、読書をするなどの対応が良いでしょう。

精神疲労の場合は、スポーツをする、散歩に行くなどして身体を動かすことが疲労回復につながります。精神疲労の場合は身体が疲れているわけではないので、TVを観るなどしてゆっくりしているようでも、心が急いてしまい、疲労回復につながらないのです。

さらに、疲労回復のためには睡眠も重要な役割をしています。就寝の2~3時間前までにスマートフォンやパソコン、テレビなどの明るい光を見ないようにし、食事や入浴も済ませておくと、入眠しやすくなります。

特に、夕食を食べすぎてしまうと寝ている間に消化吸収を行うことになるため、体がしっかり休むことができず、翌日に疲労感が残ってしまうことがあります。良質な睡眠のためには、食事の時間にもできる限り気を配りたいものです。

疲労を溜めない工夫は、QOL、いわゆる「生活の質」を高めます。心も身体も生き生きとした生活を送ることができるよう、食生活以外の生活習慣も見直していきましょう。

平井 千里プロフィール

メタボ研究を行いエビデンスに則ったダイエットを教える管理栄養士。小田原短期大学 食物栄養学科 准教授。女子栄養大学大学院(博士課程)修了。前職の病院での栄養科責任者、栄養相談業務の経験を活かし、現在は教壇に立つ傍ら、実践に即した栄養の基礎を発信している。

(文:平井 千里(管理栄養士))

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