金属行人(12月14日付)

 鉄鋼業は装置産業の代表格だが、銀行業も装置産業だという話を聞いた。「店舗には相当金をかけた金庫をつくり、ATMなどのシステム投資負担も重い」という。そもそも店舗自体が、都市の一等地で重装備となっている▼メガバンクの決算を見て驚いたが、みずほフィナンシャルグループの部門別決算で、リテール・事業法人カンパニーの業務純益が今年度上期は赤字だった。個人などを相手にしている「みずほ銀行」の店舗の多くが、このカンパニーの傘下にある▼銀行の店舗は、先ほど述べた建物の装備、システム投資、人件費などで固定費が重い。一方で低金利による貸出スプレッド悪化があり、フィンテックの広がりで手数料収入も減少。ついに赤字に転落したというのが実情のようだ▼三菱UFJ銀行の実店舗の来客数は10年で4割減り、逆にインターネットバンキング利用者は5年で4割増えている。利用者ニーズの変化、金融業にとっての需要構造の変化に対応できなければ、固定費が重いだけに巨艦が沈むリスクもゼロではない▼さまざまなところでメガトレンドの変化が起きている。スプレッド悪化構造に悩むのは鉄鋼業界でも見ることのある景色だ。銀行など伝統産業の新たな挑戦は他人事だと思えない。

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