【記者座談会 非鉄この1年(1)】〈鉱山・製錬〉資源価格回復、業績に追い風

海底熱水鉱床、連続揚鉱試験に世界初成功

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E 今年は何と言っても資源価格の回復が大きかったね。

D 非鉄金属価格は全般的に昨秋からの上昇基調が継続した。銅価格は夏場以降に一段高となり、11月にはLME(ロンドン金属取引所)価格がおよそ3年ぶりに7千ドル台を突破した。亜鉛は昨年から続く鉱石需給のひっ迫を背景に、10年ぶりの高値水準で推移。鉛は6年ぶり、ニッケルは2年ぶりの高値をつけるなど資源業界に追い風が吹いた年だった。

A 資源価格の回復に、円安進行、電子材料など下流事業の好調も加わり、非鉄製錬大手8社の17年4~9月期決算は全社が増収増益となった。通期予想も11月に7社が上方修正し、6社が増益を見込んでいる。

D 来年の非鉄金属の需給バランスは銅、亜鉛、鉛、ニッケルのいずれも不足バランスが継続するとみられている。価格も安定的に推移してくれることを期待したいね。

E 需給への影響で言えば、年初にインドネシアでニッケルやボーキサイトなどの未加工鉱石の輸出規制が緩和され、3年ぶりに鉱石輸出が再開したね。

A 日本企業はすでに他国に調達先をシフトしていたので調達面で大きな混乱はなかった。価格面でも輸出再開の影響が懸念されたが、一方で年前半はフィリピンで鉱山の環境規制強化を進める動きがあり、それほど大きな影響はなかったと言えるのではないか。ただ、フィリピンではインドネシア同様に、鉱石の高付加価値化政策を模索する動きもみられる。引き続き資源ナショナリズム的な動きは日本として注視していく必要があるね。

B そういう意味では石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が、国産資源である海底熱水鉱床の連続揚鉱試験に成功したことは将来の鉱物資源の供給源の多角化という点で大きな成果だったね。

A 海底資源開発の実現にはまだ課題もあるが、世界に先駆けて技術を確立しておくことが重要という点は関係者の間で考え方が一致している。「資源の囲い込み」に対して一定のけん制にもなるし、実際にこのニュースは海外からも大きな注目を浴びたと聞いた。

D 技術力に定評のある日本が本気で海外資源を開発するとなれば資源国も無視できないということだね。

C 日本企業の海外鉱山投資では進展があったのかな。

A 6月に住友金属鉱山がカナダのコテ金開発プロジェクトへの参画を発表した。本格操業となれば同社の金権益生産量が年18トン弱まで引き上がり、長期ビジョンで目標に掲げている年30トンに一歩前進する。

E 日鉄鉱業は8月にチリの銅探鉱プロジェクト「アルケロス」の権益62・81%を追加取得し、権益80%、議決権の100%を得た。20年ごろに開発工事に着手し、22年に操業を開始する予定だね。

D 亜鉛でもDOWAホールディングス子会社のDOWAメタルマインがロス・ガトスプロジェクト(メキシコ)の開発工事を開始すると発表したね。DOWAが亜鉛精鉱全量を引き取る権利を有し、本格操業となれば同社の自山鉱比率が約40%まで引き上がる。同社が中長期的に目標とする自山鉱比率50%に大きく近づき、亜鉛鉱石の安定確保に大きく貢献しそうだ。

A 国内ではパンパシフィック・カッパーの佐賀関製錬所がれんが更新を含む自溶炉の大規模更新を1973年以来、44年ぶりに実施した。今後は高負荷操業が可能となり、鉱石やリサイクル原料の処理量アップや新しい技術開発にも取り組みやすくなる。

E もともと佐賀関は自溶炉1炉当たりの生産能力が世界最大級の高い生産性を誇る製錬所だったが、さらなる競争力強化につなげていくということだね。

D 今年は東邦亜鉛が創業80周年を迎えた。これまでさまざまな困難もあったと聞いたが、現在では鉛が国内首位、亜鉛が国内シェア2割を占める企業に成長。近年は資源ビジネスも積極的に展開している。90周年、100周年に向けてさらなる発展を期待したいね。

A 大きな節目という意味では三菱マテリアルの直島製錬所も創業100周年を迎えた。現在では年間20万トン以上の銅を供給しているほか、貴金属生産でも国内トップクラスを誇る、日本を代表する銅製錬所の一つだ。今後もE―スクラップ(金銀滓)処理を積極的に拡大するなどして製錬所の競争力強化に取り組んでいく考えだ。

D 最後になるが、今年はバーゼル法の改正もあった。長年の懸案だった廃鉛蓄電池の海外流出と輸出先での環境上、不適正な処理を防ぐという点で大きい意義がある。

A リサイクル原料の輸入手続きも簡素化されることが決まった。実際に効果が出てくるのはこれからのようだが、日本における適切な資源循環の促進と、各社が注力しているリサイクル事業の競争力強化の一助となりそうだね。

 (非鉄金属業界の今年一年を振り返る「記者座談会」を6回にわたり掲載します)