新幹線ホームの屋根 全体覆えず 長崎新駅舎、建設費・予想上回る

 2022年度に暫定開業する九州新幹線長崎ルートの新長崎駅ホームの屋根の長さが、長崎県と長崎市のデザイン基本計画でホーム全体を覆う250メートルとしながら、暫定開業時に約7割の180メートルにとどまることが14日、長崎県への取材で分かった。予想より費用がかさむのが要因。屋根などデザイン策定に予定より1年間も時間を費やした影響で、在来線を一部高架化する県事業の完成も21年度にずれ込み、計画の“ずさんさ”が際立っている。

 県と市の基本計画は、屋根を含め駅舎などのデザインを固めるのに時間がかかり、16年3月に策定。屋根について「海への方向性を感じさせる」といった趣旨を記し、曲線で高低差のあるデザインをつくった。

 しかし、「曲線などの構造のため建設費が予想より数億円高くなり、財政負担が厳しい」(県都市計画課)と判断。海方向のホーム南側は眺望スペースを設けるが、70メートル分の屋根が足りないまま暫定開業を迎える。その後、県は残りの屋根を付ける考えだが、時期は未定。県と市は南側に改札口を設け、新県庁舎側へのアクセスをスムーズにする構想も13年策定の「駅周辺エリア整備計画」に盛り込んだが、開業時は設置されない。

 屋根を含めた駅のデザインを練るのに時間をかけたことで、新駅舎から松山町までの在来線の高架化事業も遅れ、在来線が高架を走れるようになる時期も18年度から19年度に遅延。  このため現長崎駅舎を1年長く使わなければならず、跡地に市が計画する駅前交通広場の着工も遅れる見込み。JR九州の駅ビル拡充計画への影響も懸念される。

 フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の開発が難航し、長崎ルートの整備のあり方が不透明な中、駅前周辺開発も連鎖的なずれを起こしている。県都市計画課は「申し訳なく思っている。新幹線の開業は命題。影響を与えないよう市やJR九州などと協議する」としている。

新しい長崎駅の内観のイメージ図(長崎県提供)。屋根は曲線が特徴だが、暫定開業時にはホーム全体を覆うことができない

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