【記者座談会 鉄鋼この1年】〈(3)需給・販売〉建材需要増、夏から本格化

特殊鋼、複合要因でタイト化加速

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C 鋼材需要は堅調。東京五輪関連の建材需要は昨年まで出る出ると言われていたが、今年夏ごろから本格化し、年の後半にかけて盛り上がった。

D 鉄鋼建材商社のトップは「建築も土木もいい。来年はもっと良くなりそうだ」と話していた。みな明るい顔をしている。

A 鉄のお客さん(ユーザー)は、自動車分野も建設分野でも「仕事はある。ただ人手不足で、すべてをこなし切れない」と言っている。

F 品種別で見て、一番ひっ迫度合いが強いのは特殊鋼棒線。次に薄板だろう。店売りに玉がなかなか回ってこない。

C 昨年、年末にかけて薄板や形鋼中心に国内需給が急速にタイト化し、高炉メーカーは12年ぶりに国内薄板の店売り引き受けをカットしたが、今年はカット幅が広がった。

F 薄板では、当初は酸洗鋼板だけが品薄だったが、他の品種にも広がった。

B ステンレス需給も薄板中心にタイトだ。メーカーの生産不調や事故も一因だが、1年以上にわたり需給バランス、市況が安定推移していて「業界に40年身を置くが、こんなことは初めて」という声も聞く。

G 鋼材需要に影響の大きい国内の自動車生産台数は、自動車メーカー各社の積み上げベースで通期980万台。普通は、最初高くて次第に下方に修正されるんだが、それが下がってこない。

A 自動車分野ではKD生産増も鋼材需要増につながっている。高炉の営業が「今までと違う形で需要が増えているように感じる」と話していたが、KDとは別に、非日系自動車向けの部品生産が増えている。特殊鋼はリーマンショック前以上の需要水準になっているんじゃないか。

G SUV車の販売が増えて鋼材使用原単位が増えていることも一因だろう。特殊鋼で言えば、中国で東北特殊鋼の破綻や地条鋼取り締まりによる鋼片供給減で、特殊鋼メーカーがフル稼働になっている。この影響もあり、日本の部品メーカーや特殊鋼棒線メーカーへの引き合いが増えているよ。

E 中国では日系自動車が売れている。韓国の現代自動車は大きく落ちているが、その分が日系に回ってきている感じだ。日系商社の現地コイルセンターの稼働率が上がっているのは、そうした要因も大きい。

B 冒頭で話が出たが、建設分野も需要が旺盛だ。非住宅向けはいまひとつだが、住宅向けが増えており、トータルで前の年より3%程度需要が増えている。

C 国内の地域別で見ても、東北と関西は足元でいまひとつと言うが、それ以外は活況だ。

F インバウンド関連で北海道や九州はホテル建設などの需要がある。北海道ではTPP関連で牛舎の建設が多いと聞いた。関西もこれからは出てくる。確かに東北で大きい案件は東芝の新工場ぐらいしかないかもしれないが…。

D 需給ひっ迫の流れの中で、厚板は取り残されていた感があるが、9月ごろから雰囲気が急速に変わってきた。

C 厚板ミルの稼働を含めた「タイト」の受け止めについて、メーカーによって温度差はあるが、鉄源ネックでタイトであることは確かだ。

B 年初の火災事故で休止していた大分の厚板ミルが立ち上がって需給緩和を心配する声が強かったが、需要環境に変化があり、心配したシナリオにはならなかった。

G 鉄の流通販売という点で言うと、1年前と比べて物流ネックが浮き彫りになった。緊急トラック対応で輸送することが増えている。

A 船(内航船)ならトン2千円程度で済むところが、緊急トラックで運ぶとその数倍になるんじゃないか…。運転手が集まらないし物流費用アップが半端じゃない。

D 供給タイトでミルの生産が納期ぎりぎりになることも多く、トラックで急いで運ぶというケースが目に付く。

E 今後の鉄の販売・流通を考える上で、物流は大きな課題だ。鉄は重量物であることから運ぶことに大きなコストがかかる。どういうルートで、低コストで、短納期に、傷付けずに鋼材を運ぶかは、鉄鋼業にとってもともと大きなテーマ。人手不足や働き方改革で、そのコストが大きく上がっているわけで…。

A 確かに、鉄鋼業は物流業と言われることもある。日本の粗鋼1億1千万トン程度の生産には、原材料の搬入、製鉄所内の輸送、鉄鋼製品の輸送など、多くの物流が必要だ。それらを合わせると合計で10億トン程度の物資の輸送が必要と言うよね。改めてそれを考えさせられた年だった。

C 鋼材流通の経営者が「関東の内陸に各社が在庫拠点をつくっているが、運転手が集まらなくて運べなかったら意味がない」と話していた。メーカーも流通も、業界共通の課題だ。

F 鉄筋棒鋼の需要は年度の後半に入ってようやく改善の兆しが見えてきた。ただ、東京五輪関連などで当初期待されたレベルには程遠く、改善の実感が乏しいのが実情だ。

B 鉄筋用小棒の国内向け出荷量は上期(17年4~9月)が382万トン。普通鋼電炉工業会が予測した17年度の需要が765万トンなので、上期はちょうど半分だ。低水準だった前年度よりはいいが、伸び率は2%程度。需要が良くなっている実感はないだろうね。