田中貴金属、曲がるタッチパネル製造で新技術 銀ナノインク印刷を実用化

 TANAKAホールディングスは14日、グループ会社の田中貴金属工業が、銀ナノインク印刷技術を用いて曲がるタッチパネルを製造可能な新技術を実用化したと発表した。ロール状に巻いたフィルム基板に、回路を印刷形成し、ロールに巻き取りながら生産する「ロールtoロール方式」で、ほぼ不可視な極細線(線幅2~4マイクロメートル)のメタルメッシュ(MM)センサフィルムを製造するシステムを世界で初めて構築した。同フィルムは20万回(半径2ミリ)の折り曲げ試験でも抵抗値の変化がほとんどなく、一般的な信頼性試験もクリアした。タッチパネルのほか、有機ELダイオードのディスプレイや、抗菌・触媒・遮熱などの機能フィルムへの応用も期待されている。

 同技術は、科学技術振興機構の産学共同実用化開発事業の開発課題「金属細線を用いたタッチパネル用センサフィルム」として、産業技術総合研究所の研究成果をもとに、田中貴金属工業が企業化開発を進めていたもの。研究グループは、特殊な銀インクと活性化されたフッ素樹脂表面との吸着反応により配線形成する新技術(SuPR―NaP法)を実用的な製造速度に適応させるため、反応機構の解明、製造装置の開発、各工程の条件検討などを行い、従来方式には無かった新生産システムを構築した。線幅4マイクロメートルのMMフィルム製造実験でも10メートルのロール長さで95%以上の歩留まりを達成した。

 スマートフォンなどで現在主流の静電容量方式タッチパネルは、センサにITO(インジウム―錫酸化物)が使用されているが、電気抵抗値が高く、曲げに弱いため、大型化や3次元曲面化、フレキシブル化への対応が困難だった。また、これらの問題をクリアするMMは、4マイクロメートル以下の細線化が難しく、これを印刷する製造技術もなかった。

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