長崎県知事選 告示まで1カ月 前回と同じ一騎打ちか

 任期満了に伴う知事選は来年1月18日の告示まで1カ月となった。3選を目指す現職の中村法道氏(67)と共産党県委員会書記長の原口敏彦氏(56)が出馬を予定しており、今のところ4年前の前回と同じ構図による一騎打ちの様相。互いに出馬表明が遅く、慌ただしく選挙戦になだれ込もうとしている。投票は2月4日。  「いつ表明されるのかとやきもきしました」。県庁で6日、県市長会の推薦状を手渡した田上富久長崎市長がそう切り出すと、中村氏はにこにこと応じ「成果が問われる時期になりつつある。もっと頑張らないと」と決意をにじませた。

 人口減少、県民所得の低迷など2期目で改善しきれなかった面もある。それでも、続投を目指すか逡巡(しゅんじゅん)する表情も見せた10月とは一転、出馬表明後は「すっきりしたようだ」とある自民党県議。「一般質問の答弁も、知事が反論する機会が増えた気が…」と変化を分析する。  中村氏は2010年に自民、公明両党の支援を受け初当選。当時政権与党だった民主党の推薦候補らを破った。前回は原口氏との一騎打ちを約29万票もの大差をつけ再選を果たした。過去2回と同様、今回も無所属で立候補を予定する。その一方で自民、公明に推薦願を出した。  「圧倒的に勝つことが強いリーダーシップにつながる。知事がやりやすいようにしてあげることが大事」。15日、自民党県連は中村氏を推薦するよう党本部に上申すると決定。取材に応じた加藤寛治会長は全面支援の姿勢を鮮明にした。

 ただ、県連内で中村氏への視線や距離感は異なる。自民県議は7月の議長選を巡り二つの会派に分かれ、加藤会長に近い自民・県民会議側からは中村氏を「温厚な人柄」「誠実で勉強家」など高評価が相次ぐ。一方、中村県政の検証を重視する会派「自民」側には「今も政治家になりきれてない」「発想力がほしい」と厳しめの指摘もある。  こうした温度差に神経を使いながら、中村氏は選挙に臨むとみられるが、早速小さな“火種”も。中村氏が自民より先に連合長崎と政策協定を結んで推薦を受けた点に、党県議からは「自民も数ある団体の一つにしか扱われていない」と不満が出た。

 一方、解党の可能性も取り沙汰される民進党県連は対応の検討を深めていない。それでも県議会会派としての要望の後、渡辺敏勝幹事長は「3選、頑張って」と知事に声を掛け握手。前回に続き相乗りの色合いが濃い。

 原口氏は共産党公認だった前回とは異なり、無所属で党の推薦を受ける。党県委員会などでつくる「民主県政をつくる会」は8日、決起集会を開催。応援弁士は国営諫早湾干拓や石木ダムなどに触れ、「県民をないがしろにしている」「知事が変わればお金の使い方を変えられる」と中村県政を批判。同会の新木幸次事務局長は「私たちの訴えのどれか一つでも賛同できれば幅広い支持層が得られるはず」と市民共闘に望みをつなぐ。

 知事選にはこのほか、西彼長与町に住む元県職員の男性(60)が出馬の可否を慎重に検討中。東京都のNPO法人代表の男性(55)が候補擁立を模索している。

吾妻愛野バイパスの開通セレモニーで拍手をする中村氏=雲仙市愛野町
決起集会で決意表明する原口氏=長崎市桜町、県勤労福祉会館

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