大谷移籍でさらに加速? MLBで先発6人制導入への機運高まる、米紙が特集

エンゼルスへの入団が決まった大谷翔平【写真:Getty Images】

ローテ5人制が基本のメジャー、エンゼルスは大谷のために6人制導入へ

 日本ハムからポスティングシステム(入札制度)でのエンゼルス移籍が決まった大谷翔平投手。壮絶な争奪戦を制したエンゼルスはメジャーでの二刀流実現へ向け、登板間隔を広げて合間にDHとして起用するため、先発ローテーション6人体制の導入を示唆している。メジャーの先発ローテは5人体制での中4日登板が定番だが、これから6人体制移行への流れがさらに加速する可能性があると、地元紙「ニューヨーク・タイムズ」が報じている。

 記事では、大谷を指導することになるエンゼルスのマイク・ソーシア監督が、現役時代の1982年にドジャースで捕手としてワールドシリーズを制覇しているという経歴を紹介。当時のドジャースでは、フェルナンド・バレンズエラ、ジェリー・レウス、ボブ・ウェルチの3投手はそれぞれ36試合以上に先発し、年間235イニング以上を投げ抜いたことに言及している。

「年間200イニング、33試合先発で成功していた投手が当時はたくさんいたものだ。彼らはそれでよかった。でも、170イニングに到達することも難しい投手もいるんだ」

 ソーシア監督はこう語ったという。同紙は、現時点のエンゼルスのロースターでメジャーで年間160イニングを投げたことがあるのは、2014、15年シーズンのギャレット・リチャーズ投手のみであることも指摘。そのリチャーズも故障後、2年間で合計12試合の先発に留まっている。

 そして、大谷を陣容に加えることになるエンゼルスは先発ローテーション6人制導入の方針を新たに打ち出している。

 日本ハムでは投手、指名打者として活躍していた大谷は通算防御率2.52、9回平均の奪三振数10.3という成績をマーク。記事では「マウンドで圧倒的であり続けた」と紹介する一方、6人ローテが基本の日本ではシーズン24試合以上の登板経験がないことも指摘している。

 また、エンゼルスのビリー・エップラーGMが他球団も6人制ローテの導入を検討していること、投手の健康維持につながるなら「大賛成」だと話していたことにも言及。従来5枠だった先発ローテの拡大は大谷の二刀流継続のための施策だけではなく、先発投手の故障のリスク排除などにもなるというのだ。

パドレスも6人制を導入へ「理に叶っている」

 ヤンキースも、これまで右肘靭帯損傷など田中将大投手の回復状態からシーズン途中で6人ローテを導入した経緯もある。

 記事では、今季ワールドシリーズ(WS)を制覇したアストロズではシーズン153回1/3のマイク・フィアーズ投手(現タイガース)が最多イニング数で、アストロズにWSで敗れたドジャースでもフィアーズ以上のイニングを投げたのはエース、クレイトン・カーショー投手(175イニング)のみだったと紹介(シーズン途中移籍のダルビッシュは2球団で計186回2/3)。先発投手のレギュラーシーズンのイニング数を制限したチームが頂上決戦にたどり着いた例を挙げている。

 また、大谷争奪戦で面談に招待された7球団の1つ、パドレスのアンディ・グリーン監督は、獲得交渉の結果に関わらず、6人ローテ導入の方針を二刀流右腕に伝えていたという事実についても触れている。

「我々は将来的にメジャーの先発投手に成長しようとしている多くの若手投手を頼りにしている。彼らは6人ローテ制度に入るだろう。我々は昨年9月にこれを導入した。先発投手の1番手から6番手までのレベルにさほど差がないなら、導入することは理に叶っている。休養こそが彼らにとって最良だからだ」

 グリーン監督はこうコメントしている。さらに、レッズのブライアン・プライス監督も、大谷獲得に成功した場合は6人ローテを導入することを明言していたと報じられている。

 レイズのチェイム・ブルーム副社長は記事の中で「誰もが使っている雛形にはめ込もうとするのとは対照的に、自分たちの戦力を見たときに考えるチームもいるかもしれない。選手個々の状況を鑑みれば、彼らを活用する最良の方策は何なんだろう、とね。6人ローテはその一例なんだよ」と語っている。

 先発投手の枠を拡大すれば、25人のロースターから野手や抑え投手の1枠を犠牲にすることになる。また、これまで中4日で登板してきた先発投手のイニング数などが減ることになれば、年俸に影響が出る可能性もある。ただ、先発投手の健康維持に繋がる“NPB方式”の6人ローテ本格導入の機運は、アメリカでにわかに高まりを見せている。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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