【記者座談会 非鉄この1年】〈(3)アルミ製品〉車パネル向け投資相次ぐ 神鋼、三菱アルミで品質問題も

B 次はアルミ製品業界を圧延品中心に振り返ろう。日本アルミニウム協会がまとめた17年上期のアルミ製品総需要は、圧延品やダイカストなど幅広い分野が伸びを示して前年同期比4・5%増の212万2310トン。圧延品も2・6%増の103万8050トンということで、需要量自体は好調という印象が強い。

C 圧延品は缶材が夏場の天候不順でビール向けの不振が響いた。それでも去年を上回ったのは自動車(乗用車・トラック)や半導体・液晶製造装置用材料の出荷が高水準だったことが要因だ。建材も東京オリンピック・パラリンピック関連や駅前再開発、都心のオフィスビル需要などで動きが出始めている。

A 一方で、年間を通じてアルミ板メーカーがフル稼働状態にあり需給はタイトだった。リーマンショックや東日本大震災、それに伴う超円高による景気停滞により各社が工場の構造改革を進めていたため、急な需要増に人員面で生産が追い付かなくなってしまった。製缶メーカーや自動車メーカーへの出荷が優先され、一般店売り市場などの供給量が細ったこともあり流通や問屋は特に春先に材料調達で忙しかったようだ。

E 需要自体は、これからも大きく落ち込む予想はあまり聞かれないね。アルミ地金価格の上昇ペースが速いことは若干ネガティブ材料だけど、対日アルミプレミアムも100ドル前後でまあ安定している。あとはメーカーがどれだけ対応できるかということか。

D メーカーは出荷量の増加とアルミ地金高で各社の業績が改善傾向にあるね。この数年、大型投資が目立つアルミ圧延業界だけど、今年はどうだった?

C 今年も加速している感がある。神戸製鋼は5月にアルミ板増産のために550億円の大型投資を発表した。米ノベリスの韓国工場の持ち分50%を取得するほか、真岡製造所に自動車パネル専用の熱処理・表面処理ラインの新設を決めた。UACJも10月に福井製造所へ160億円を投じて車パネルの専用ラインの建設を発表した。日本でもついに本格化する自動車のアルミ化需要を獲得するという強い意志が感じられる。

B 三菱アルミニウムはスウェーデンのグレンゲスと提携交渉に入った。悲願である自動車熱交換器用アルミ板の海外進出を目指してだが、来年にも米国での共同生産に向けた契約がまとまる可能性がある。昭和電工もアルミ缶事業で、ベトナム第2工場とタイ新工場を相次いで公表した。総額100億円以上の大プロジェクトだ。インドネシアのアルミナ合弁事業で167億円の特損を計上したが、膿は出し切り成長分野で果実をものにする気概を感じる。

A 一方で年後半は〝品質問題〟に揺れた。

C 神戸製鋼が品質データを書き換えて出荷していた問題はアルミ業界にとどまらず、産業界を揺るがす問題に発展した。顧客からは『安全性に問題』がないということだったが、脆弱な品質管理体制により失った信頼はあまりにも大きい。年内に外部調査委員会が報告書をまとめる計画なので、その内容も踏まえた上でこれからに望むことになるだろう。

B 三菱アルミニウムでもそういった案件が確認された。日本アルミニウム協会では、鉄鋼連盟のような品質管理ガイドラインを策定するかといった議論をするためのワーキンググループを作ったという。業界として何か手を打てればいいが。

E 神戸製鋼は、真岡製造所と長府製造所でJISマーク製品の出荷を一時停止することになったので、一部業界には影響が出そうだ。

D いずれにしても日本のアルミ製品に対する国内外のユーザーからの視線は厳しくなった。すべての企業が品質管理やコンプライアンスの意識を改め、襟を正して地道に信頼回復に努めていくしかないだろう。

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