【メタルワンの中長期戦略】〈岩田修一社長兼CEO〉「国内プラットフォームを再構築」 地方での「売る力」がカギ

――まずは根幹となる業績から。IFRS(国際会計基準)ベースの上期の売上げ総利益は564億円、純利益は112億円でした。前年同期はそれぞれ498億円、78億円で増収増益に。

 「取扱数量は前年度上期が1064万トン、今年度上期が1058万トンと6万トン減った。鋼材単価がトン8万3千円から9万6千円に1万3千円上昇したことで増収になっているが、数量が減ったことには少し不満がある。売る力を付けていこうと言っており、売る力を磨くことが重要だ」

メタルワン・岩田社長兼CEO

 「今年度の取扱数量は下期に増えて前年度よりも5%程度増加の見込みだが、数量にこだわって売上げ総利益率を昨年同様に確保すれば、それなりのボトムライン(純利益)が出せるようになってくる」

――本部別の業績貢献度合いは。

 「最も貢献度が高かったのは第二営業本部(薄板・自動車・電機産業向け)で、取扱数量で約50%、総利益で4割を占めた。次は第一営業本部(建材・厚板・鋼管)で数量が12~13%、総利益で3割弱。国内建材事業である旧メタルワン建材の約700万トン(年間)が外れているため、それも含めれば実質的にはもう少し多い数量となる。その次が線材特殊鋼・ステンレス本部で数量が15%、純利益が約25%。あとは第三営業本部(輸出やエネルギープロジェクト)だが、エネルギープロジェクトが低迷しており貢献度が低かった。この分野をどう立て直すかが課題だ」

――SBU(事業部)制を導入して損益管理を徹底していますが、どの事業の貢献度が高いですか。

 「薄板、自動車鋼材、線材、特殊鋼、ステンレスなどが堅調だ」

――上期利益の国内外の比率は。

 「本体を除いた子会社利益と持ち分法利益を見ると、国内が54%で海外が46%。昨年度は国内52%で海外48%であり、国内の比率が上がっている。全体の利益が伸びているが、国内の増加幅が大きい」

――グループ会社の業績について。

 「直接連結先110社のうち黒字が90社、赤字20社だった。なお前の期に比べて黒字会社数は2社増え、赤字は3社減った」

――グループ会社の中での業績の明暗について。

 「国内ではエムエム建材、メタルワン鋼管などの利益貢献度が高かった。海外ではタイのコイルセンターのMSATやメタルワンアメリカ、北米コイルセンターのコイルプラスなどが堅調だった。一方でエネルギー分野のグループ会社の収益体質改善が課題だ」

――下期の計画や環境見通しは。

 「需要は堅調に推移しそうだ。一段の(鋼材価格の)値戻しが進むとみており、そうなればトレードの収益にはプラス要因となる。また口銭商売とはなっていない加工業や小口販売事業では、いかに仕入れ値高を製品価格に転嫁できるかが課題だ」

 「懸念点は石炭等の原料価格上昇と中国の動向。中国は共産党大会が終わって落ち着いて推移しているが、成長が鈍化する局面に移行していく中で、多少心配な面もある。注視していきたい」

 「そうした中で、昨年度の182億円(IFRSベース)を上回る純利益確保を確実に達成したい。上期が112億円で、当社は下期偏重型の利益構造にあり、(昨年比増益は)いける見込みと考えている」

――今年度の投資案件について。

 「米国でカーギル社の熱延厚中板加工事業を買収するのが最大案件。これはインフラや産業機械分野がターゲットになるが、コイルプラスやメタルワンアメリカの既存の商流とシナジーを出していきたい。米国のコイルプラス、メキシコのニコメタルと買収したカーギルの事業など合わせて400万トンの加工規模に拡大する」

――その他の投資は。

 「当社のビジネスは約6割が自動車向けとなっており、やはり自動車分野への投資が多くなる。そのほか、働き方改革にも関連するが、コイルセンターの自動化投資は生産効率化とともに安全衛生にプラスに働く。すでに着手しているが、RPA(ロボティックス・プロセス・オートメーション)導入などによる事務作業自動化の検討を含め、労働生産性を上げるための投資も行う」

――2020年度に純利益300億円を稼ぐのが中長期目標です。

 「取扱数量を2500万トンに拡大し、いかなる環境においても純利益300億円を安定的に確保できるような収益基盤の強化を進める。足元の実力値では到底及ばない。既存事業の中で、強いところをより強くすると同時に、新たな収益源を育成する」

 「国内では組織体制含めたプラットフォームの再構築を考えている。特に地方での『売る力』がカギになる。国内再強化に向けていろいろなことを考えている」(一柳 朋紀)

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