金属行人(12月19日付)

 野菜が高騰している。今年は台風が多く、しかも10月中旬と遅くに上陸した台風もあり、野菜の生産に大きな影響が出たという。特に白菜、キャベツ、春菊、レタスなど葉物類が急騰している▼デフレが続く日本だが、今年はモノやサービスの値上がりが目立った。官製はがきや宅配便、バター・チーズ…。電気代やガス代も上昇が続き、家計には厳しい1年となった▼鉄鋼業界でも春以降、値上げの風が吹いた。きっかけはオーストラリアで発生した大型サイクロン。石炭を輸送する鉄道網に被害が出て、原料炭価格は瞬間的に2倍に跳ね上がった。副原料の上昇もあり、鋼材価格への転嫁は待ったなしとなった▼今月飛び出したのが電気炉で鉄スクラップを溶かすのに使う黒鉛電極。値上げ時期は来年4月だが、2倍を超える引き上げだ。大手メーカーによると海外では既に2~3倍に上昇しているという▼電極価格の上昇は、中国の「地条鋼」全廃が引き金。この違法操業で使われていた鉄スクラップが既存の電気炉に流れ、電極消費を押し上げた。電極原料の急騰も相まって、市場は「電極パニック」の様相を呈している▼鉄鋼業にとって資機材の購入コストは意外に大きい。自助努力によるコスト削減は当然だが、努力を超える分については顧客への丁寧な説明が必要だろう。

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