【記者座談会 非鉄この1年】〈(5)チタン・新金属〉チタン展伸材出荷、4年連続増 レアアースEV向け需要増、価格回復

E 次はチタン業界を振り返ろう。まず、新日鉄住金や神戸製鋼所などが手掛けるチタン展伸材の需要はどうだったのか。

F 総じて堅調な1年だったと言えそうだ。最新の1~9月出荷統計や市場関係者の声から推計すると、2017暦年の全国チタン展伸材出荷量は1万7千~8千トンと小幅ながら前年実績を上回る可能性が高い。前年比でプラスは4年連続。直近のピークだった08年の1万9727トンに比べてまだ少ないが、緩やかな増加基調が続いている。

B 今年の需要のけん引役は。

F 主力の発電プラント、プレート式熱交換器(PHE)向けの海外需要が持ち直したことが大きい。一方、低迷したのが海水淡水化プラント向け。昨年の2881トンからほぼゼロに激減した。この逆風の中で全体の数量が前年実績を上回るわけで、来年にも期待が持てる流れだ。

E 価格も上昇基調だったのか。

F 神戸製鋼所が8月末にチタン展伸材の販売価格を一律10%引き上げると表明した。値上げは5年ぶりだ。展伸材の販売価格は需要が好調だった08年度の5~6割程度と落ち込みが続いてきた。値上げによるマージン改善を通じ、安定供給を継続するためのコスト増などを吸収したい考えだ。

A 大阪チタニウムテクノロジーズや東邦チタニウムが生産するスポンジチタンはどうだったのか。

F 主力の航空機向け、一般産業向けとも需要環境は悪くはない。販売価格は好転まで至らなかったものの、需要回復を背景に13年度以降続いていたジリ安傾向に歯止めが掛かってきた。

E 8月には米タイメットが日本とカザフスタン製のスポンジチタンに対しアンチダンピング(AD)調査を申し立てた。

F 1983年以来、34年ぶりの対日スポンジチタンAD案件だったが、ITCが国内産業への被害は認められないとし、10月に予備調査段階で調査を終了した。予備調査段階での「シロ」判定は異例だ。日本のスポンジ各社には安堵が広がったが、結局、タイメット側の狙いがよく分からないまま幕引きとなってしまった。

C チタン展伸材のトピックスに戻るけど、新日鉄住金が展伸材の生産拠点を2拠点に増やしたことも話題になった。

F これまでの広畑製鉄所(兵庫県姫路市)に加え、4月から八幡製鉄所(北九州市)でもチタン熱延薄板コイルの生産をはじめた。生産拠点を分散させ、万が一不測の事態が生じた場合も事業を継続しやすくする狙いだ。顧客となる国内製造業が素材の安定調達を重視していることを念頭に置いた対応で、チタンの適用拡大が期待される自動車産業などからの受注増につなげたい狙いがある。

E 次はレアアース業界にいこう。

C 昨年まで中国の寡占化からの脱却、価格の長期低迷などが話題となっていたけど、電気自動車(EV)需要の増加などを映して回復の機運が強まった1年と言えるだろう。信越化学工業がベトナム工場の生産能力を2倍に引き上げたことも需要環境の好調を示している。

A 特に価格面では春ごろまで低調に推移していたものの、その後は急激に上昇に転じた。

D 価格の値上がりは中国の違法採掘の取締りが強化され、供給ひっ迫懸念が台頭したことも大きいんじゃないか?

C 実際には違法採掘で枯渇する心配はないが、EVのモーターなどに使われるネオジムは、年初から8~9割高の水準まで値上がりした。中国が環境規制措置を継続する限り、今後も価格のサポート材料となる可能性は高い。

D 日本の需要も増加基調にある。今年上半期の中国・内モンゴル自治区の輸出量のうち約半分が日本向け。これは、同国の輸出割当措置や関税の撤廃も寄与している。

E 国内では、日立金属がレアアース大手の三徳の買収を発表したことが話題を集めたね。来年の子会社化を計画しているようだ。日立金属はネオジム磁石の世界最大手。三徳が持つ合金製造技術や電池材料における強みを生かし、シナジー効果を出していく狙いだろう。

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