フランスのリーグアンで首位を快走するPSG。
その原動力は前線の「NMCトリオ」だ。
そして、その中でも特にネイマールは19試合に出場して17得点13アシストと「異次元の世界」を披露している。
先日行われた、レンヌ戦でも1ゴール2アシストと圧巻のパフォーマンスを見せたのだが、その中からあるシーンをピックアップしたいと思う。
前半42分に見られた「ネイマールのドリブル」だ。
ネイマールのドリブルは以下の動画より
このドリブルを見て、皆さんはどのような感想を抱かれただろうか。
いとも簡単に相手を抜き去ってしまうその技術は「さすが」の一言に尽きるが、注目して欲しいのは「抜いた」ところではなく、実は相手守備陣を「操った」ところにある。
「相手を操る」というドリブルの意外な効果
「ドリブル」と言えば、「相手選手を単独で抜き去るための武器」というイメージが一般的だろう。
「ドリブルが上手い選手」というのは「相手選手を抜ける選手」を指すことがほとんどだ。
そして、ネイマールはその技術で言うと、自他共に認める世界最高峰。
メンタルが不安定な時はボールが足に着かないこともあるが、平常運転であれば、どのチームが相手であっても脅威の存在で、絶好調時はまさに「無双」である。
このシーンでも、敵陣に進入するやいなや「またぎフェイント」と「緩急」で簡単に一人を抜き去り、カバーリングに動いた右サイドバックに対しては「コース取り」だけであしらう。
ついには、左サイドバックのインターセプトも回避して、カバーニをお膳立てしてしまった。
最終的にはカバーニの動きとパスのタイミングが合わなかったこともあり、ゴールこそならなかったが、ネイマールの特徴が出たシーンであることは間違いないだろう。
さて、少し話がずれてしまったが、ここで伝えたいのは、ネイマールのドリブルはただ「抜く」のではなく、相手守備陣を「操る」という点でも好影響を与えていたという点だ。
まだこの説明だけでは、ピンと来ない方もいらっしゃるかと思うので、もう少し詳しく図解する。
ドリブル序盤
こちらはネイマールが相対する選手を「抜き」にかかる直前のシーンだが、この時に見ておきたいのがレンヌDF陣のマーキングにある。
ネイマールの前にはドラクスラーとカバーニがいたが、この段階では、レンヌのDF陣は各々きっちりとマーキングができていることが画像からもわかるはずだ。
仮にここにボールが入ろうとも、DF陣からすると「すぐに対応できる距離感を保っていた」という感覚だっただろう。
ドリブル中盤
続いてはそれから数秒後。ドリブルで抜き去った後のシーンだ。
レンヌの右サイドバックがエンバッペのマークを捨て、ネイマールに対してプレスを掛けに行こうとしている瞬間である。
そして、ここで同時に注目したいのが、カバーニのエリアで、先ほどと比べてマーカーとの距離が開き始めていることがわかるはずだ。
理由は簡単。
このタイミングで右サイドバックがDFラインを飛び出してボールに行くと、センターバックの一枚はエンバッペのマークを受け継ぎ、もう一人のセンターバックも「その穴を埋めよう」とポジションをスライドさせるのが基本だ。
そうすると、必然的にポジションは中央寄りになり、センターバックの横で「膨らむ」動きを見せたカバーニとの距離も開くというわけだ。
さらにもう一つ。
カバーニのマークについていた選手の体の向きも見て欲しい。やや中央寄りで、なおかつ視線はネイマールに向けられていることがわかるだろう。
つまり、このDFはカバーニへの対応が難しい体制を強いられており、そしてそのように仕向けたのが何を隠そうネイマールである。上述の「相手を操るドリブル」だ。
ドリブル終盤
そしてこの「相手を操るドリブル」のフィニッシュがこのシーン。
最終的にネイマールは相手の左サイドバックまで吊り出して、カバーニにパスを出すのだが、最後の最後までDF陣はネイマールに翻弄されたことがよくわかる図だ。
ドラクスラーに対してマークを受け継いだセンターバックが近い距離を保っているのだが、カバーニに対してはさらに距離が開いてしまっている。
これはネイマールが取ったドリブルのコース取りと方向に秘密がある。ネイマールはやや左から中央に入るイメージでバイタルエリアに進入するコースを取ったのだが、このポジションに入ってこられると、相手DF陣はシュートコースを塞ぐわけにはいかない。
そのため、センターバックもカバーニには注意をしつつも、このようなポジションを取らざるを得ないのである。
そしてその結果、カバーニはトラップからシュートまで余裕を持って行える状況を手にしたのだ。
何もドリブルは「抜く」だけが仕事ではない。「操る」ことでもチャンスは生まれる。