【新日鉄住金グループ企業の〝今〟(12)】〈日鉄住金ドラム〉TPM活動で企業体質強化 産業容器の総合提案を推進

 日鉄住金ドラムは、1934(昭9)年に日本ドラム罐製作所として設立後、製鉄ドラムとの合併や日鉄ドラムへの商号変更を経て、新日鉄住金の発足に伴って2012年から現在の社名となっている。千葉(千葉県市原市)と相模原(相模原市緑区)、名古屋(愛知県東海市)、大阪(大阪府泉大津市)の4工場と完全子会社、山陽ドラム缶工業(岡山県倉敷市)の計5カ所にドラム缶の生産拠点を構え、高度な品質ときめ細かな納期管理を積み重ねる。

 各拠点では、化学や石油、塗料をはじめ全国の需要家に密着した納入体制を敷き、安定有利に製品を供給する。「社業を通じて社会貢献」を基本理念に掲げるなか、さらなる飛躍の礎を築き上げるべく、全社を挙げて抜本的な体質改善に向けた取り組みに挑む。伝統的なTPM(総合的な生産活動の改善)にトヨタ生産方式(TPS)が融合した「アドバンスドTPM(A―TPM)」活動はその象徴だ。

 TPM活動は3年前から「全社・全員」参加を基本に展開する。「徹底したロスの削減」や「リードタイムの極限追求」などを旗印に、コストの改善や設備の稼働効率向上を目指して研さんを積む。きめ細かなプログラムに基づく一連の活動は着実に成果を生み、時間の経過とともに定量的に掲げる目標値を超える実績を上げている。

 直近においてもドラム缶を製造する際、溶接部分の段差を小さくする圧延装置のロール交換について、所要時間を大幅に短縮できる構造と手順を考案するなど活動の輪は刻々と広がりを見せる。

 日本プラントメンテナンス協会が主催するTPM賞をめぐっては、昨年度に千葉と名古屋、今年度には相模原、大阪の各工場が優秀賞カテゴリーAを受賞した。通常3年の活動期間を経て受審するのに対し、日鉄住金ドラムの4工場はいずれも史上最速の2年での受賞となった。山陽ドラム缶工業は来春にも一次審査を予定する。

 TPM活動とともに、革新的なドラム缶の製造技術体制を構築する。昨春には相模原工場に併設する技術センターを建て替え、開発・研究拠点の機能を大幅に拡充。ショールームの常設をはじめ顧客に対する「見せる化」を追求した造りで、「悩みを共同で解決できる研究の場」として広くシーズとニーズを捕捉する。顧客対応や設備開発、商品性能の検証や改善といった多彩な役割を通じて、産業容器の総合提案を推進し、技術先進性を発揮する。

 技術センターを起点に新商品の開発にも力を入れる。直近で胴部のカール形状を強化した危険物用薄手オープン缶の新商品を市場投入したのはその一例に挙がる。全社で「『もの造り』への誇りと矜持をもち、いかなる競争や変化にも勝ち残っていかなければならない」(藤井清澄社長)との思いを共有し、高機能化に絡む潜在需要を捉え、新技術や新商品、コストダウンを通じて競争力に磨きをかける。(このシリーズは毎週水曜日に掲載します)

企業概要

 ▽本社=東京都江東区

 ▽資本金=16億5400万円(新日鉄住金の出資比率=100%)

 ▽代表者=藤井清澄

 ▽売上高191億円(17年3月期連結)

 ▽主力事業=鋼製ドラム缶の製造・販売、コンテナー等特殊容器の販売、充填機、ドラム缶製造設備等の産業機械装置の販売とこれに係わるエンジニアリング

 ▽従業員=219人(17年9月末)

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