【工場ルポ】〈ネツレン・尼崎工場〉建機・自動車向け、幅広い部品の熱処理に対応 高効率生産体制の構築に主眼

 ネツレン(高周波熱錬)の尼崎工場(兵庫県尼崎市)は、2018年に操業開始から10年を迎える。IH(誘導加熱)事業部傘下で表面熱処理加工を展開する基幹拠点の一つとして、建設機械や自動車の部品向けを中心に大小幅広いサイズの部品に対応。表面熱処理加工部門で国内に立地する全5工場の一翼を担う。

 尼崎工場は、尼崎市南部で阪神高速道路が近く、アクセス良好な大浜町に工場建屋2棟を構える。大阪工場(当時)から生産機能を移管。08年2月から一部の稼働を開始し、大阪からの一連の動きの完了に伴って09年11月に全面稼働。その後11年9月に当初の第1工場(建屋面積・約5千平方メートル)に続く第2工場(同・1600平方メートル)を取得し、現在の体制に至る。

 工場運営をめぐっては、「効率の良い生産体制の構築」(同社)に主眼を置き、熱処理する部品の大きさや用途などによって構内を複数のゾーンに分割して生産ラインを編成する。歯車や軸受(ベアリング)、旋回輪に代表される建設機械や一般機械、自動車などを構成する部品について、焼入れや焼戻しといった独自ノウハウに基づく熱処理を手掛けている。

 構内には熱処理の設備やそれらの部品を保守・修繕する専門の部署も備え置き、突発的な設備の異常に素早く対応する。

 熱処理を受託する部品は、世界最大級から手のひら大まで、重量や長さ、外径が実にさまざまだ。超大型をめぐる取り扱い可能なサイズ領域の広さは、他の拠点はもとより、業界でも指折りの尼崎工場ならではの大きな特徴であり、対象部品の強度向上や設計段階での部品の小型化などを導く。構内では量産と並行して最少で1つから受注する部品の納入があり、名実とも「多品種小ロット」の発想も息づく。

 生産現場を支える社員の大半は、金属熱処理技能士(高周波・炎熱処理作業)や金属材料試験技能士(組織試験作業)、非破壊試験技術者(磁粉探傷試験)といった技能資格をもつ。一人ひとりの技量に応じて若手から熟練にかけての幅広い世代を配置し、安定供給と高い品質の維持・向上につなげている。世代交代が進む中においても全体の底上げが進むゆえんだ。

 IH事業部の加工部では、尼崎とともに茨城(茨城県ひたちなか市)▽寒川(神奈川県寒川町)▽刈谷(愛知県刈谷市)▽岡山(岡山県総社市)の各工場が広域な供給ネットワークを確立する。国内外で顕著な機械部品の需要拡大に対し、現行の中期経営計画「Global Innovation70th」に基づく事業基盤の強化を踏まえ、それぞれが保有する設備の特色を生かして関連需要を捕捉する。(中野 裕介)

© 株式会社鉄鋼新聞社