A5が最高とは限らない?牛肉のランクとブランドの仕組み【和牛のイロハ 1】 日本が世界に誇る高級食材「和牛」。国産牛と和牛の違い、和牛の種類やブランド牛の定義、そしてA5ランクの牛肉がおいしいと言われるのはなぜ? などなど、牛肉に関する様々な疑問について、全2回に分けてお届けします。かしこく・おいしいお肉を選べるかも!

お祝いの日や記念日のごちそうといえば焼肉、ステーキ、しゃぶしゃぶなど、高級なイメージの牛肉を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。中でも、美食の象徴ともいえる「和牛」は、世界でも「WAGYU」と呼ばれ高い評価を得ています。しかし、どうして和牛は美味しいのか?和牛と国産牛の違いは?どんなブランドがあるの? など、実は知らないことも多いのではないでしょうか。

そもそも「和牛」とは?国産牛との違いは?

スーパーなどで買い物をしていると、牛肉のラベルに「○○和牛」「国産牛」といった表記を見かけることがあると思います。「国産牛」は、”最長肥育地が日本国内である”牛すべてを指しています。つまり海外で生まれ育った牛でも、日本にいる期間が一番長ければ「国産牛」と表示できます。しかし、国産牛のなかでも「和牛」と名付けられるのは、決められた血統・品種のもののみ。以下の4種だけを、和牛と呼ぶことができます。
・黒毛和種
(いわゆる黒毛和牛:和牛のなかで最もポピュラーなもの)
・褐毛和種
(褐毛和牛:高知県や熊本県のあか牛が有名です)
・日本短角種
(短角和牛:健康的な赤身肉が特徴)
・無角和種
(無角和牛:飼育数が最も少なく、全体の1%以下!)

ブランド牛はどのように決められているの?

国産牛と和牛の違いはおわかりいただけたでしょうか。次は和牛の中でも値段や高級感がぐんと上がる「ブランド牛」についてご説明します。
ブランド牛とは、ざっくり言うと、生産地や育て方などの条件によって、各地の生産組合などで定義され販売されているものです。日本には、ブランド牛と名のつくものは160種近くあると言われています。一例として、「日本三大和牛」と呼ばれる三種類のお肉の定義を見てみましょう。
※日本三大和牛については諸説ありますが、松阪牛・神戸牛・米沢牛または近江牛と言われています。今回については米沢牛を取り上げました。

「松阪牛」とは

・黒毛和種、未経産の雌牛
・松阪牛個体識別管理システムに登録されていること
・肥育は松阪牛生産区域(旧22市町村)でのみ肥育され、生産区域での肥育期間が最長・最終であること
※生後12ヶ月齢までに松阪牛生産区域に導入されたこと

「神戸牛」とは

「神戸肉・神戸ビーフ」とは、「兵庫県産(但馬牛)」のうち、未経産牛・去勢牛であり、枝肉格付等が次の事項に該当するものとする。 尚、神戸肉・神戸ビーフをKOBE BEEF、神戸牛(ぎゅう)、神戸牛(うし)と呼ぶことができる。
〈1〉歩留・肉質等級
・「A」「B」4等級以上を対象にする。
〈2〉脂肪交雑
・脂肪交雑のBMS値No.6以上とする。
〈3〉枝肉重量
・雌は、230kg以上から470kg以下とする。
・去勢は、260kg以上から470kg以下とする。
〈4〉その他
・枝肉に瑕疵の表示がある場合は、本会が委嘱した畜産荷受会社等(委嘱会員)がこれを確認し、「神戸肉・神戸ビーフ」の判定をする。

「米沢牛」とは

・飼育者は、置賜三市五町に居住し米沢牛銘柄推進協議会が認定した者で、登録された牛舎での飼育期間が最も長いものとする。
・肉牛の種類は、黒毛和種の未経産雌牛とする。
・米沢牛枝肉市場若しくは東京食肉中央卸売市場に上場されたもの又は米沢市食肉センターでと畜され、公益社団法人日本食肉格付協会の格付けを受けた枝肉とする。但し、米沢牛銘柄推進協議会長が認めた共進会、共励会又は研究会に地区を代表して出品したものも同等の扱いとする。また、輸出用は米沢牛銘柄推進協議会が認めたと畜場とする。
・生後月齢32ヶ月以上のもので公益社団法人日本食肉格付協会が定める3等級以上の外観並びに肉質及び脂質が優れ ている枝肉とする。
・山形県の放射性物質全頭検査において放射性物質が「不検出」であるものとする。

以上の定義は、各地の生産組合で定められているものを引用しました。このように、一言でブランド牛と言っても種類によって様々な項目や範囲で定義されています。特に神戸牛は、数あるブランド牛の中でもトップクラスの厳しい規格と言われています。お肉の産地や牧場が一緒でも呼び方が違うことがあるのは、こういった基準によって分けられているからなんですね。

お肉の格付け・ランクのカラクリ

ところで、上記の条件の中にも出てきた「A・B級」や「4等級」といった数字とアルファベットは何を表しているのでしょうか? もしかしたら「A4、A5ランクのお肉」といった文言の方が聞きなれているかもしれません。これは牛肉のランク(格付け)を表しており、(社)日本食肉格付協会によって与えられています。ランクの付け方については、下の図表をご覧ください。

(牛肉の格付け/ランク付け表)

ランクは一番下のC1から、一番上のA5まで15段階に分けられています。A/B/Cのアルファベットは、枝肉の歩留まり(食べられる部分がどれだけ多いか)によって3段階で格付けされます。1~5の数字はサシ(脂)の入り方・肉の色・質感によってつけられます。つまりA5ランクのお肉は、可食部分がたっぷりとれて、サシが細かく均等に入った、赤身・脂身の色が美しいしっとりとした肉、というわけです。

■A5ランク=最高品質とは限らない?

最高品質の代名詞のように言われる「A5ランク」や「霜降り肉」。とはいえ、一概にA5でなければいけないということはありません。サシが細かく入っているということは、脂身の旨みをより強く感じるということ。人によっては、赤身の割合が多い方がお肉本来の味が楽しめると感じるかもしれません。また、B5ランクでも肉質等級自体はA5のものと変わらないので、同等のお肉を少しお得に購入できるということもあり得ます。格付けによる安心感・信頼性などを感じていただきつつ、ランクにとらわれすぎることなく、お肉を選ぶ判断基準の一つとしていただければと思います。

基本を知って、おいしい牛肉を楽しもう

ここまでは、日本の牛肉に関する言葉の違いや、ブランドの定義、格付けの仕方といった基礎知識を読んでいただきました。次回は、各地域のブランド牛の育て方による特徴や味の違いについて、プロの方に聞きながら深掘りしたいと思います。ぜひ、お味を想像しながら読んでみてくださいね。

**※後編はこちら※
**[牛肉のプロに聞く!ブランド牛の違いと選び方 【和牛のイロハ 2】](https://www.chiikiiro.com/articles/10)

**※関連リンク※
**知っておくと役立つ知識いろいろ。

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